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第20話

皆が驚いて彼を見つめる中、秀一はしばらくして咳を収め、色は蒼白だった。

皆は社長が先ほどの報告に不満を持ったのではないかと緊張していた。

秀一は険しい表情のまま、翔太に何かを低い声で伝え、その後落ち着いた声で「続けて」と言った。

皆はホッとし、翔太は静かに会議室を退出した。

川盛グループのロビー。

美穂はソファに座り、机に置かれた雑誌を退屈そうにめくっていた。背後から急ぎ足の音が聞こえ翔太の声が響いた。

「奥様、どうしてご連絡もなしにお越しになったんですか?」

案内してきた受付のスタッフは驚愕の表情を浮かべていた。「この方が本当に藤井社長の奥様なのか?」

でも、さっき藤井社長は彼女のことを知らないって言っていた!

いや、それはもうどうでもいい。問題は、自分が奥様にあの写真を撮ってしまったことだ......!

青ざめた顔で、スタッフは心の中で自分のキャリアの終わりを感じていた。あの二人、本当にこんなゲームをしているのか......?

美穂は雑誌を閉じ、「電話したけど、森本さんは忙しくて気づかなかったみたいね」

翔太はもちろん、美穂からの連絡があったことを知っていたが秀一の指示で無視するしかなかった。

彼は美穂の皮肉に気づかないふりをして、「大変申し訳ございません。先ほど会議中で、携帯はオフィスに置いておりました。また、新しい秘書が受付を担当しており、不手際があったかと存じます。本当にご不便をおかけしました。どうぞ、こちらへお進みください」と、完璧な敬語で対応した。

彼が言うことは一切隙がなく、もし美穂が秀一からの「彼女を知らない」という言葉を聞いていなかったら、信じてしまっていただろう。まったく、この蛇と鼠は同じ穴の仲間だ。

エレベーターで二人が降りた後、翔太が「奥様、本日は何かご用でしょうか?」と尋ねた。

美穂は手に持った袋を持ち上げ、「秀一に、これを彼のお母さんに渡してほしいの」

翔太が「それだけですか?」と聞くと、美穂は「それだけじゃないわ。離婚の話を秀一と直接話したいの」と答えた。

すると翔太が「社長はまだ朝食を召し上がっていません」と言った。

美穂:「え?」

この話と何の関係があるの?

彼女の疑問を察した翔太は「社長は朝食を抜くと、朝は機嫌が悪くなるんです。そんな時に話し合いをすると、うまくいかないことが多いんですよ
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