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第14話

「深川さん、私の婚約者は臆病なんです。勝ち負けにはこだわりませんから、適当にやってもらえれば」

澄人は不安そうに、腕の中で終始うつむいたまま黙っている晴子を見た。

「瀬名さんも、私の婚約者をよろしく頼みますよ」

深川は意図的に「よろしく頼みます」という言葉に強調を置いた。

深川の車は別荘の外に停まっていた。他の人たちの車は別荘の裏手の駐車場に停められていた。

晴子は深川の後ろをうつむきながらついて行った。実際、この遊びは北原市で何度もやったことがあり、一度も負けたことがなかった。

この遊びは互いの協調と信頼を試すものだ。男が十分に冷酷になれずにブレーキを踏むか、女が死を恐れて逃げるかのどちらかだ。

もし二人の間に十分な信頼があれば、ブレーキも踏まず逃げもしない。そうすれば全員が負け、最後に残った者が勝つ。

深川が相手を交換する提案をしたことで、この遊びはより刺激的で危険な様相を呈した。確かに、状況は大きく変わった。

以前なら、晴子は怖くなかっただろう。しかし今は、深川がアクセルを踏んで彼女を轢き殺すのではないかと本当に恐ろしかった。

深川は親切そうに車のドアを開けてくれた。晴子は何も言わず、体を横向きにして彼の前をすり抜けようとした。しかし次の瞬間、深川は素早く手を回し、彼女を車のドアに押し付けた。

「随分と大胆だな。命を賭けて瀬名の機嫌を取るつもりか?ん?」

「ご心配なく」

晴子は顔をそむけた。

深川は興ざめした様子で彼女を放し、車に乗り込んだ。

晴子が座席に座ったとたん、ドアが完全に閉まる前に、深川はアクセルを思い切り踏み込んだ。

晴子はよろめき、ポケットから薬が転がり出た。

3年前の海への転落事故の後、彼女は過換気症候群を患うようになり、ひどい時には病院に運ばれたこともあった。

深川はちらりと見て、さも軽く尋ねるように言った。「どうした?不治の病にでもかかったのか?悲劇のヒロインが数日しか生きられないっていう展開か?夢夜、言っておくが、お前が死んでも俺は墓を掘り返してお前を標本にしてやる。信じないなら死んでみろ」

晴子は目を転がし、不機嫌そうに言い返した。「大した面じゃないわ。あなたが主人公だなんて」

言い返した直後、後悔した。

今や命そのものが相手の手中にあるのに、何をプライドを張っているのか。

初秋の夜はすでに少
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