共有

第15話

5台の車は前後にずれて車道に現れた。

梁井大輝が最初に現れ、高速で隣の若い女の子に向かって突進してきた。傍で見ていた晴子も恐ろしくなった。スピードが速すぎて、今ブレーキをかけても間に合わないだろう。

晴子は「逃げて!」と叫びたかったが、この子が逃げても死を免れないことを知っていた。

続いて残りの4台の車が並んで、同じような高速で現れた。

左側の2台の車はすぐにカーブを曲がった。晴子はその2人の女の子が恐怖で崩れ落ちるのを見た。そして江口紗耶を見ると、彼女の整った顔には恐怖の色はなく、むしろ口元には笑みさえ浮かんでいた。

瀬名澄人が彼女に向かって突進してきた。紗耶は逃げず、澄人も車を逸らさなかった。それは極度の信頼関係を示していた。

晴子は一瞬我を忘れた。次の瞬間、耳をつんざくような悲鳴が聞こえた。

大輝のゴール地点にいた若い女の子が逃げ出したのだ。

大輝の車が彼女の傍をかすめ、窓から顔を出して興奮気味に叫んだ。「お前は死んだも同然だ」

紹田悠雷はこの状況を見て事故を恐れ、車で追いかけた。晴子は若い女の子が林の中に逃げ込むのを見た。大輝は車でその後を追っていった。

「晴子!!!!」

タイヤが地面をこする耳障りなブレーキ音。我に返った晴子は、瀬名澄人が車を止めて自分に向かって走ってくるのを見た。そして、深川の車が高速で自分に向かって突進してくることに気づいた。

しかも、減速やブレーキをかける様子は全くなかった。

澄人は狂ったように駆けてきて、手を振って晴子に避けるよう合図した。

その瞬間、晴子の視界には自分と深川しか残っていなかった。緊張、恐怖、不安が一瞬にして心を覆い尽くした。

胸に酸っぱい痺れるような感覚が這い上がってきた。彼女は呼吸がどんどん速くなるのを感じたが、息を吐き出せなかった。

まるでビニール袋を被せられたかのように、呼吸ができない。手足がだんだん痺れてきて、自分の手が強く縮こまっているのを見下ろすと、体が震え始めた。

彼女は頭を回して澄人を見た。

これが自分から澄人への別れの贈り物になるのだろう。

「キーッ!」長く鋭いブレーキ音が夜空を切り裂いた。林の中を暴走していた大輝が唾を吐き、Uターンして戻ってきた。

「晴子、晴子」

澄人は倒れた晴子を抱きしめ、慌てて彼女のポケットを探ったが、薬が見つからなかった。「晴子、
ロックされた本
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status