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第9話

颯太が来週のベルヒル国行きのチケットを手配してくれた。出発前に、翔一の母親が大好きだったレイシを買って、最後にお墓参りをすることにした。

翔一のことではなく、彼女には恩があるからだ。

翔一の母親は郊外の最も豪華な墓地に眠っていた。遺影の彼女は穏やかで優しい微笑みを浮かべており、記憶の中の姿と同じだった。

腰をかがめて墓石を掃除しようとしたとき、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

「高橋さん、何しに来たの?」

それは紗江子だった。

彼女は優しく微笑みながら言った。「お義母さんのお墓参り?心がこもってるわね。でももう必要ないわ。これからは私が代わりに世話をするから」

彼女は私が持ってきた花を目の前で投げ捨てた。その瞬間、彼女の手首に目をやり、見覚えのあるブレスレットが目に入った。

私は拳を握りしめ、「そのブレスレット、どうしてあなたが持ってるの?」

紗江子は得意げな笑みを浮かべながら言った。「翔一がくれたのよ。彼が言ってたわ。これは将来のお嫁さんに渡すものだって」

「違う、そんなはずはない......」

このブレスレットは彼のお母さんが私にくれたものだ。翔一にはそれを他の誰かに渡す権利なんてなかった。

「翔一はどこにいるの?教えて!」

キレる人は力が小さくないからか、私は紗江子を強く引っ張り、その顔はゆがんだ。彼女はやっとの思いで外を指さし、「あんたを見たくないって言ってたわ。だから、あんたが帰るまで待つって」

私は翔一のところに駆け寄り、彼の胸を何度も叩いた。「なんで?どうしてそんなことをするの?あのブレスレットが私にとってどれだけ大切か知ってるのに!最後の思い出さえ奪うなんて、最低よ!」

翔一は無言のまま、しばらくしてから冷たい笑みを浮かべた。「もし母さんが、今のお前を見たら、あのブレスレットをお前にやるくらいなら、犬にでもくれてやるだろうな」

「美咲、笑えるよな。俺のことなんかいらないって言っておきながら、母さんがくれたものはまだ大事に持ってるなんて、どれだけ矛盾してるんだ?」

「さっさと消えろ。母さんに構うな、うんざりしているから」

彼が言い終わる前に、私は彼を見つめる視線がぼんやりと焦点を失っていった。「翔一、本当にお前を捨てたのは、嫌ったからだと思ってるの?」

「何年も経ってるのに、一度も説明させてくれなかったし、真実
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