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第6話

翔一は一瞬戸惑いながらも、電話を取った。

「鷹山さん、都合がいいでしょうか?紗江子との結婚について、少し話したいことがあるんだ」

電話の主は、紗江子の父親で、栄光グループの社長だった。

「今はちょっと……」

「いいから、一度来てくれないか?食事はどうでもいいけど、商売の話の細かいところを確認したいんだ」

翔一は黙り込んだまま、私を見つめ、電話を横に置いた。

「頼めよ、美咲。お前が一言頼むだけで、彼を断るぞ」

「俺は紗江子と結婚しないさ。もう誰とも結婚するつもりはない」

かつて、私も彼にこうやってお願いしたことがあった。

翔一が他の女を連れて、前に現れた時、私は勇気を振り絞って、以前黙って姿を消した理由を伝えようとした。

でも、その日、彼は何と言ったのだろう?

「美咲、くだらない言い訳はやめろ」

「嘘つきの言葉を、俺が信じるとでも思うか?」

「説明してほしいなら、跪いて俺に頼め」

彼は私のプライドを何度も何度も傷つけた。お互いに傷つけ合い、決裂した後でさえ、まだ彼に頼ると思っているなんて。

私は彼の目をまっすぐ見つめ、一言一言、はっきりと告げた。「お前に頼む価値なんてないわ」

「出て行け。もう二度とお前なんか見たくないよ」

翔一はその場で立ち止まり、冷たく笑い声をあげた。

彼は電話を取り、丁寧に言った。「ちょっと待ってください。すぐ戻るから」

そう言い終えると、私を一瞥することなく、ドアを乱暴に閉めて出て行った。
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