第11話

私、妊娠していた。

その事実を知ったとき、思わず息が止まりそうになった。

恋人もいないのに、どうして妊娠なんてするんだろう。

颯太は心配そうに私を連れて、次々と検査を受けさせた。

翔一も機嫌が悪そうで、私を見る彼の目には、様々な感情が渦巻いていた。まるで今にも泣きそうな顔をしていた。

「どうして子どもがいるんだ？誰の子か分かっているのか？」

私は颯太を信頼していたが、彼は教えてくれなかった。ただ、「君の体調がよくないから、子どもが無事に育たないかもしれない」と淡々と言っただけだ。

まあ、育たなくてもいいか。どうせ産んでも私には育てられなかった。

私は深く考えずに、寝ては食べ、食べては寝る生活を続けていた。記憶力は悪くなっていたけれど、毎日幸せに過ごしていた。

そんなある日、一人の女性が現れた。

「美咲、わざとやったんでしょ？子どもを使って男を縛ろうなんて、最低ね」

彼女は美しい顔をしていたが、私に対する態度は決して優しくはなかった。無視しようと思ったが、彼女はそれでも食い下がってきた。

「何か言いなさいよ。知らんぷりしても無駄よ。妊娠したくらいで、あんただけが子どもを産めるわけじゃないんだから」

彼女は私に一枚の検査報告書を投げつけた。そこには「佐藤紗江子」という女性が妊娠していることが書かれていた。おそらく彼女のことだろう。

でも、なぜそれを私に見せるのか、理解できなかった。だって私は彼女の子どもの父親じゃなかった。

「あんたのお腹の子どもと、私のお腹の子ども、父親は同じよ」

私は驚愕し、彼女を見つめた。

彼女は冷笑を浮かべながら、親切そうに続けた。「でも、あんたのほうが少し早く妊娠したみたいね。それが何を意味するか、分かるの？」

私は寒気がして、体が震えた。記憶力が悪くても、バカじゃなかった。

「翔一があんたと寝た後、すぐに私と寝たってことよ。あんたの子どもと私の子ども、妊娠の間隔はたったの二週間もないわ」

「でも、違いがあるのよ」

彼女は笑って私の顔に近づき、「私の子どもは正式なもの。あんたの子どもは隠し子よ」

「嘘だ、嘘だ！隠し子なんて言うな！私はそんなことをしない！」

私は決して他人の家庭を壊すようなことはしなかった。この女は騙そうとしているんだ。「あんたのお腹の子どもの父親をここに連れてきて、私たちで対決しま