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第6話

それでも、彼が陽太に平手打ちを食らわせるとは思わなかった。

「お前は母親とそっくりだ!」と、彼は悔しそうに言った。

そっくりって、どういうこと?

同じように従順ではなく、自分の考えを持ち、何もかも彼のためにと彼の過剰なプライドを考えていないということ?それとも、彼の浮気に目をつむらないということか?

「悠」

私は冷たい顔で歩み寄り、手を上げて平手打ちを食らわせた。

彼の顔が横を向き、くっきりとした手の跡が浮かび上がった。

私はこれまでにない軽蔑の口調で言った。「自分が何様だと思っている?」

陽太は呆然とし、一瞬私を見てから、すぐに飛び込んできた。

「ママ!

彼女が言ったよ、ママとパパが離婚するって!

本当なの?」

私は表情を緩め、微笑みながら陽太の頬をつまんで言った。

「ようくんのために、しばらくはしないよ」

でも、その時、私は新しい考えを持つようになった。

12

この件が起こった後、私はしばらくしてから悠と連絡を取ることがあった。

彼は私と話をしたいと言ってきた。

その時、私は陽太を連れて空港のロビーで歩いていた。

私は彼に聞いた。「何の話?離婚のこと?」

陽太は顔を上げて私を見た。

私は手で彼の頭を押さえた。

悠は無言で息を呑み、空港の賑やかな人の声が受話器越しに聞こえてきた。

「今、どこにいる?」

私は無言で電話を切った。

飛行機がもうすぐ離陸するから。今はもっと大事なことがある。

もうすぐ良時の命日だが、私はこれまで一度も陽太を彼の実父の墓に連れて行ったことがなかった。

画面にメッセージが表示された。

私は一瞥して、携帯の電源を切った。

13

源家と綾小路家はどちらも無名の小さな町で成り上がった家柄だった。

先祖の墓は修繕され、良時はその中に葬られている。

墓碑に貼られた写真は、私と良時のツーショットから切り取ったものだった。

彼は笑顔で、白い歯を見せていた。

私がそばにいたから。

私は陽太の頭を撫でて、優しく言った。

「ようくん、これが本当のパパよ」

陽太は悠の子供ではない。

だから、悠が浮気をした時、私は道徳的な立場から彼を非難しようとは思わなかった。

私自身に道徳なんてないからだ。

「彼はようくんに会いに来る途中で事故に遭ったんだ。死ぬ直前までママにメッセージを送ってたよ」
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