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君に染まる瞳
君に染まる瞳
著者: 朝月(あさつき)

第1話

私は綾小路 (あやのこうじ)悠 (ゆう)と結婚して五年になった。

周りの人々の目には、私は彼を深く愛しているように映っていた。

投資し、支援し、協力し、揺るぎない姿勢で彼の傍らに立ち続けてきた。

彼をビジネス界の新星に育て上げたのだった。

彼もまた、私が彼を愛していると思っていた。

私を見るときはいつも目に愛情をたたえているが、その裏で堂々と愛人を囲っていた。

彼はその女にこう言った。

「彼女のことが本当に嫌なんだ」

私はそれを見て見ぬふりをしていた。

ただ、その馴染みのある顔がスポットライトの下で堂々と輝く様子を見つめていた。

もしあの人がまだ生きていたら―

きっと彼もこんなふうに目立つ存在だっただろう。

悠が愛人を囲っていることは、私は知っていた。

会社に新しく入った経理担当の女性、波打つような長い髪、笑うと華やかで堂々としていた。

菅野秘書はこう言っていた。

「彼女、若い頃の社長にそっくりですね」

だが後になって彼は言い直した。

「いや、違います。社長の方がもっと賢いです」

しかし、菅野が彼女をどう評価しようと、悠は会社の社員に心を奪われていた。

とはいえ、これを言っても信じる人はいないだろう。

ここ数年で、悠の「妻を愛する夫」というイメージは人々の心に深く刻み込まれていたからだ。

誰もが見ていた。彼が私の進んできた道をつまずきながらも歩んで、ようやく自信を持って私の傍に立つことができるようになった様子を。

誰もが知っていた。彼がこの関係の中で卑屈で哀れな存在であり、泥沼の中でもがいていることを。

遥か遠く、終わりの見えない道のように。

それはまるでかつて道を失った少年のようだった。

人混みの中の通りに立ち尽くし、世界のすべてと分断されているかのように。

私は彼を一目で見つけた。

視線をその顔に固定し、狩人のように慎重に近づいた。

そして彼に言った。

「源 (みなもと)家って知ってる?君は、源家の長男にとても似てるよ。

彼、一週間前に事故に遭ったんだ」

彼がこちらを見てくるのを感じて、私はさらに微笑みを深くした。

「源家の遺産に興味がある?私が手助けしてあげる」

悠は私をじっと見つめ、しばらくしてからかすれた声で「はい」と言った。

だから、この関係の始まりは決して純粋なものではなかった。

でも彼はどうやら純粋だったらしい。

純粋すぎて、間もなくその瞳に熱い愛情を見せるようになった。

私でさえ、それが本物かどうか判断できなかった。

遠藤 (えんどう)穂乃 (ほの)香 (か)が現れるまでは。

穂乃香が初めて姿を見せたのは、あの日だった。

そのとき、私は悠の目の中に、光のようなものを見た。

一瞬、私は呆然とし、ぼんやりと頭の中で、最近ではほとんど思い出すことのなかったあの人のことがよぎった。

あの人と最初に出会ったときも、同じような光がその目に宿っていた。

ああ、これはきっと一目惚れってやつなんだろう、と私は思った。

やっぱりね。

穂乃香が会社に入ってから、それほど時間が経たないうちに、悠の口からこの名前が聞こえる頻度がどんどん増えていった。

「経理の遠藤さんはすごく機転が利くんだ。経理部長にもっと気にかけてもらった方がいいと思うよ」

彼は私にそう言った。

「彼女を見ると、若い頃の君を思い出すんだ」

彼はさらに続けた。

「もし、君の一番美しい時期に、僕がもう少し早く出会っていたら......」

そんなとき、私はいつも彼の顔に浮かぶ笑顔をじっと見つめた。

しばらくそうしていると、悠はやっと気づいたように、少し照れくさそうに笑みを引っ込めた。

二人の関係がどうなったのか気づいたのはいつだっただろう。

おそらく、悠が私の前で穂乃香の名前をもう口にしなくなったときだった。

それは疎遠になったからではなく、むしろ守ろうとしているからに違いなかった。

彼が家にいる間、なんだかぼんやりしていることが多くなった。

食事中もどこか気もそぞろで、陽太の宿題を手伝う間も、何度も電話をかけたり受けたりしていた。

そう、私たちには一人息子がいる。

悠は隠すように、こっそりと「機転の利くあの子」のためにいろいろと問題を解決していた。

「誰に電話しているの?」と私は聞いた。

悠は笑って、「取引先の人だよ」と答えた。

私はそれ以上聞かず、あたかも彼を信頼しているかのように振る舞った。

そして、半月後、陽太の誕生日がやってきた。

六歳の息子は彼の足にしがみついて、「パパ、今日は家にいて」とせがんでいた。

でも、悠はしゃがみ込んで、陽太の頭を優しく撫でながら言った。

「ようくん、いい子にしてね。パパはお仕事があるんだ。明日、必ず埋め合わせするから、いい?」

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