第3話

まるで若い頃に夢中で恋していたカップルのようだ。

人々はこう言っていた。「これは王子がシンデレラを愛した物語だ」と。

どうやら悠が穂乃香に自信を与えたらしい。だから彼女はその愚かな頭を使って、私の前に現れることができたのだ。

それはオークションでの出来事だった。

出品された品の中には、どうしても私が手に入れたいものがあった。

ライトの下でブルーダイヤモンドが輝き、「海の心」と称される宝石だった。

かつて誰かがそれを購入して、私にプロポーズしようとしたことがあった。

そのしわくちゃで血染めの領収書は、まだ家の金庫に保管されている。

だが、あの交通事故でその宝石は姿を消したのだ。

今、競売にかけられているのはまさにその一つかもしれない。その上にはまだ彼の血が染み付いているかもしれないだろう。

穂乃香が私の入札を見て、悠の袖を引っ張りながら、甘い声でおねだりした。

「悠、そのダイヤ、とってもきれいですね。私、欲しいんです」

悠は私を一瞥したが、何の反応も示さなかった。

穂乃香は一瞬戸惑い、少しばかり恥ずかしそうに手を離した。

その「海の心」は結局、私の手に渡った。

オークションの後のパーティーで、穂乃香はまだ自分の立場を理解していない様子だった。

彼女はゆっくりと歩み寄り、柔らかな声で「社長」と呼びかけた。

私は彼女を見ることもなく、ブルーダイヤを赤いベルベットのケースに収めた。

穂乃香は私が無視するのを見て、無理に笑顔を作った。

彼女の手にしていたワイングラスが傾き、真紅の液体がダイヤに向かってこぼれ落ちた。

私はその血のように赤い滴がダイヤに染み込むのを見つめて、急に立ち上がり、彼女の頬を一発叩いた。

テーブルの上にはたくさんのワインがあった。

私は瞼を下ろして彼女を見下ろし、一杯一杯とワインを注ぎ続けた。

そして笑顔で言った。

「遠藤さん、これは王子がシンデレラを愛した物語じゃないよ。

なぜなら、君の心の中の王子様は、ただの源家の私生児に過ぎないのだから。

私がいなければ、彼は一生、泥の中でもがき苦しんでいたでしょうね」

６

私が初めて悠という人を知ったのは、大学二年のときだった。

友人が一枚の写真を送ってきた。

その写真には、バーのウェイターの制服を着た少年が写っていた。

彼は片手を背に回し、もう一方の手でトレイを持ち、ネオンの中に立っていて、その端正な顔立ちは周囲の騒がしい雰囲気とはまるで合っていなかった。

彼は友人が隠し撮りしているのに気づいたらしく、視線を上げてこちらを見た。少し眉をひそめて、その不快感を表していた。

友人が言った。「このイケメン、源さんにそっくりだな」

その時、私はちょうど父と一緒に誕生日パーティーに出席していて、その写真を見て少し眉を上げた。

本当に似ていた。

私はソファーでうたた寝している源を見た。

彼は親指でこめかみを押しながら、目尻には赤みが差しており、目を半ば閉じたままだった。

何かを感じたようで、彼は頭を上げてこちらを見た。

その瞬間、ライトが彼の眉間の影を消し、彼は私にウィンクをし、薄い唇を開いた。

彼は声もなく言った。「涼子、頭が痛いよ」

可哀そうでありながらも憎たらしい甘えた口調だった。

私は少し笑って、友人に返信した。「雲泥の差ね」

少なくとも私の心の中では、そうだった。

７

穂乃香は怯えて震えていた。

可哀そうでたまらない。

周りの人々はみな、見物するだけだった。

悠が人混みをかき分けて、床に広がった赤い液体を見たとき、ちょうど私の言葉を耳にした。

彼の表情は険しくなり、大股でこちらに歩み寄ってきた。

穂乃香が彼のズボンの裾を引っ張り、「悠......」と呟いた。

悠は彼女を冷たく一瞥し、何の反応も示さなかった。

「こんなに長い間、君はまだ俺をそう思っているんだ」

彼は私の手首を掴み、まるで責め立てるような表情で言った。

私は彼を見て、何も言わなかった。

周りの人々は皆、見物するだけで、誰もこの場に介入しようとはしなかった。

「言えよ、涼子！何か言ってくれ！

俺がこれまでにしてきたすべての努力は、君の目には何の価値もないのか？」

私は彼の注視の中で、彼の手を振り払った。