共有

第9話

少し経ってから、菅野は私に言った。

「社長、当時の加害者が三ヶ月前に出所しました。彼の居住地もすでに判明しています」

菅野は一瞬言葉を止めてから続けた。

「中高級なマンションで、物件は彼の名義です」

5年の刑期を受けた加害者が出所したばかりで、一軒の家を持っていた。

こんな大きな穴に、今になってようやく気づくなんて。

私は思った、悠が浮気する前は、私は本当に彼に心を動かしていたのだと。

結局、丸五年も過ぎた。

それが本物でも偽物でも。

彼は確かに夫と父親としての役割をうまく果たしていた。

だから私は、自分が若い頃に誰かを好きになったことを忘れていたのだろう。何年も好きでい続けたことを。

だがその後、彼は死んだ。

私も彼を忘れかけていた。

どうして過去に囚われ続けることができるだろうか?

生きている人は、やはりちゃんと生き続けなければならないだろう。

そう思いながら、私は首を少し傾けて、軽く言った。

「源グループのここ数ヶ月の取引を調べなさい

三億万以上を送ったのに、それで一人しか救えないだと?

菅野、どちらがバカだと思う?彼か、私か?」

19

私は悠がバカだとは思わない。

会社の資金を流用したことが発覚すれば、それは確実に刑務所行きだ。

こんな愚かなことをするのは、私の愛人からの成り上がりの義母以外には考えられない。

加害者が出所した後に多額の金を要求し、悠に気づかれないように、彼女は5年間も隠していた「海の心」を売りに出したのだろう。

彼女はこの世界にはもう源良時という人間を覚えている人がいないと思っていたのかもしれないだろう。

私はブルーダイヤの入ったケースを金庫にしまい、血に染まった領収書の上に重ねた。

かつての血は黒く変色していた。

良時の名前はインクで覆われ、まるで存在しなかったかのようだ。

20

悠が私に会いに来たのは、私が予想していたよりも遅かった。

しかしそれも当然だろう、ここ最近の彼の全ての注意は穂乃香に向けられていて、その二人に付き添うのは、まるで以前の私とようくんに付き添っていたようだ。

他人の目には仲睦まじい家族三人のように見える。

今回、彼が家に戻ってきたのは、酔って家を間違えたからだろう。

私はベッドの上に座って、静かに不意の訪問者を見つめていた。

悠はドアフレームに体を
ロックされた本
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status