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第2話

胸の中に針で刺されるような痛みが込み上げてきて、涙がこぼれそうになる。

香織に昼夜を問わず拷問された時ですら、こんなに崩れそうな痛みを感じたことはなかった。

私の子ども、本当なら無事に生まれていたはずなのに。

そして、元気に育ち、可愛く「ママ」と呼んでくれるはずだった......

きっと、私は喜びに満ちてあの子を大切に育てていたはず。

でも、私を殺したのは香織なんだ!

すべては5年前、あの廃工場で終わってしまった!

そしてベテラン刑事である剛志も、長い沈黙の後にようやく口を開いた。

「初歩的な考えとしては、情殺か仇殺の可能性だな」

海斗はさらに怒りを露わにした。

「俺は情殺だと思います!」

「遺体の切断面は不規則です。これは、少なくとも頭部を切断される前に被害者がまだ意識を保っていたことを示しています。さらに、犯人は人体についてある程度の知識がある可能性が高く、おそらく女性でしょう」

「そうでなければ、これほどまでに被害者を痛めつける理由が説明できません」

私は苦笑した。

かつては死体を見るたびに震えていた海斗が、今ではこんなにも熟練しているなんて。

まさにその通りだ。

だが、剛志は海斗の言葉を聞いて眉をひそめた。

「警察の捜査は、証拠を目の前に突きつけるべきだ!」

「お前、それが『可能性が高い』とかで済む話か? 法医学者として、そんな発言が許されるのか?」

「警察学校でお前の先生はそんなふうに教えたのか?」

彼はいつも慎重で、簡単に結論を出すことはない。

だからこそ、入職したばかりの年にいくつもの冤罪事件を覆し、一気に刑事課長に昇進したのだ。

それなのに、私の件に関しては、まるで即断即決だった。

彼は香織を永遠に信じている。

あの、お金のために彼を捨てたことがあっても、絶対に純粋で善良だと信じて疑わない「初恋」を。

笑わせる。

海斗は口を尖らせながら反論した。

「俺は適当なことを言うかもしれませんが、死体は決して嘘をつきませんよ」

「見てください、宮崎隊長」

「皮膚は水に浸かってふやけていますが、異常に青黒い色をしています。これは生前、皮膚が激しく壊死していた証拠です。そして、肺には広範囲に感染症の痕跡があり、両方の腎臓は水腎症と同時に硬化しています」

「これらは全て、強い薬物の注射によって引き起こされる症状です」

その言葉を聞いた瞬間、剛志の目つきが鋭くなった。

「薬物......だと?」

海斗は一瞬驚いて、「え、どうしたんですか?」と口ごもった。

「いや、何でもない」

剛志は目をそらし、冷静にマスクを外して部屋を出て行こうとした。

「そうだ、最近、伊藤理沙のDNAと一致したものは出てきたか?」

「えっ、あの裏切り者のことですか?」

突然の話の切り替えに、海斗は一瞬考え込んでから首を振った。

「いいえ、見つかっていません」

「それも不思議ですよね。現場にはあれだけ多くの血痕が残っていて、彼女は間違いなく重傷を負っていたはずなのに、この数年、全国を捜索しても治療の記録が全く見つからないなんて。もしかして、もう死んでるんじゃないですか?」

剛志はドアの前で一瞬立ち止まった。

そして冷たく笑いながら言った。

「ふん、あんな警察の恥さらし、死んだ方がマシだ」

「香織も含め、皆があいつを信頼していたのに、結局は欲に目が眩んで大物麻薬密売人に寝返り、作戦を台無しにし、同僚を犠牲にしやがった。香織まで殺されそうになったんだ」

「この警察の制服がなければ、天涯海角まで追い詰めてでも、俺はあいつを自分の手で千切り裂いてやる!」

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