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第10話

「それは違う」

この答えを聞いて、香織は密かに安堵の息をついた。

だがすぐに、剛志の冷たい声が耳に入った。

「なぜなら、彼女はもう死んでいるからだ」

局長も海斗もその場で固まった。

「死んだ?」

香織は顔色を失い、信じられないように首を振った。

「いつのことよ?何かの間違いじゃないの?たとえ罪を逃れようとしたとしても、理沙は身のこなしが抜群なのに、どうして......」

「五年前、彼女はバラバラにされた」

「数日前、漁船が彼女の体を封じた保険箱を引き上げた。全身の骨は砕かれ、高濃度のドラッグが注射された跡があった」

「さらに犯人は、彼女の頭部を海に沈めて、魚に食わせたんだ」

剛志は冷たく彼女を見つめ、一歩一歩近づいた。

「それなのに、お前は俺に『逃げた』と嘘をついたのか?」

香織は完全に動揺し、足元がふらついた。

「で、でも、仮に彼女が死んだとしても、それは大物の麻薬ディーラーと逃げた際に口封じされた可能性だって......」

「じゃあ、これはどう説明する?」

剛志はポケットから輝く青いダイヤモンドを取り出した。

彼の声は痛みで震え、呼吸すら詰まるほどだった。

「お前、指輪を失くしたって俺に言ってたな。だけど、それは理沙の口の中にあったんだな!」

「香織、答えろよ!」

剛志の怒号が解剖室中に響き渡る。

局長と海斗は驚愕し、香織を見つめた。彼らの口は開きかけて、だが言葉が出ない。

二人とも知っていた。香織は青いものが大好きだと。

今日の結婚指輪も、青いダイヤだった。

突然、香織は笑い始めた。

「はは......なるほどね」

「だからか!」

「だからあの時、私がどれだけナイフで刺しても、絶対に口を開けなかったんだ!」

「てっきり痛くて声も出せないのかと思ったわ。あれだけアドレナリンを注射して、針でツボを刺激したってのに、指輪を盗んだのを隠すために黙ってたんだなんて。私を告発するためにね!」

「理沙、あんたって本当にしぶとい女だ!」

「死んでもなお、私を困らせるなんて。どうしてあんたは、私を苦しめ続けるんだ!」

彼女の顔は醜く歪み、ヒステリックに叫び出した。

局長はその場で身体を震わ
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