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初恋の呪い、裂かれた妻の魂
初恋の呪い、裂かれた妻の魂
著者: 星屑

第1話

解剖台の上にある死体の断片は、まるで巨大なクラゲのように膨れ上がっていた。薄黄色の粘液が絶え間なく滲み出し、ぽたぽたと垂れている。

臭いんだろうなあ。

もう死んでしまった私は、匂いを感じることはできないけれど。

「宮崎隊長が来たよ」

扉の音に気づいた検視官の海斗が、作業の手を止めて顔を上げた。

剛志は眉をひそめ、鼻を指でつまみながら言った。

「状況はどうだ?」

「遺体は完全に巨人観を呈しており、表面にもタトゥーのような目立った特徴はないです。女性だということは辛うじてわかりますけどね」

「随分と残酷だな。遺体を切り刻む前に、多くの骨がすでに粉々に砕かれていたようだ」

海斗はため息をつきながら続けた。

「でも、金庫に付いていた海底の苔から、死亡推定時期は約5年前だと判断できました」

剛志の手が一瞬止まった。しかしすぐに冷静さを取り戻し、手袋をしっかりはめ直すと、海斗と共に解剖の作業を続けた。

――もう、死んで5年も経っていたのか?

私は空中に浮かびながら、自嘲気味に口元を歪めた。

何かの理由で、私は死体を海に捨てられた後も、深海のその場所に長く彷徨っていた。

人気のないその場所では、鳥さえも滅多に姿を見せない。

嵐や雷がどれほど荒れ狂おうと、私は消えることができなかった。

そんなある日、禁漁期にこっそり深海に入って、一儲けしようとした船がやってきた。

彼らが引き上げたのは――私の死体だった。

しかし、刑事課の隊長である剛志が、今回の解剖に自ら立ち会うとは思ってもみなかった。

彼は重度の潔癖症なのに。

「うっ......!」

巨人観の死体の悪臭は、通常の死体よりもはるかに強烈だ。百戦錬磨の海斗ですら、最初の一刀を入れた瞬間、ゴミ箱にしがみついて激しく嘔吐した。

剛志も数歩後退した。

しばらくして、彼はもう一度確かめるように聞いた。

「今日は香織がいないんだな?」

「香織さんは結婚ドレスの試着で休んでますよ」

海斗は顔を拭いながら力なく答えた。

「分かってます、宮崎隊長。この件は香織さんには黙っておきますよ。お二人はもう妊活を始めてますから、こんな臭いものは、身体に良くないですし」

「そうだな」

剛志は小さくうなずき、冷たいはずのその目に、わずかな優しさが浮かんだ。

その瞬間、私は雷に打たれたように感じた。

最愛の夫が、私を殺した犯人と結婚しようとしている?

それだけじゃない、妊娠まで計画しているのか?

「剛志!どうしてそんなことができるの!」

私は抑えきれず、絶叫した。

「山下香織が私を殺したんだよ!」

だが、私の声は誰にも届かない。解剖は続けられていた。

「臓器も体表も腫れすぎていて、DNAの採取は無理ですね」

「長骨や歯なら可能性はあるが、骨は粉々に砕かれていて、頭蓋骨も見当たりません」

「犯人は遺体を完全に闇に葬ろうとしているんですよ!」

海斗は怒りをあらわにし、拳で解剖台を強く叩いた。

「さらに酷いことに、被害者の子宮内にはまだ形成途中の胎児がいたんです!」

「三ヶ月にも満たない胎児が!」

私は空中で呆然としながら、解剖台を見つめていた。

すっかり膨れ上がり、醜く変わり果てた私の子宮が切り開かれ、その中には同じく腫れた胎児が静かに横たわっていた。細い臍の緒で私と繋がり、一つだった。

あの時......私、妊娠してたの?

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