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第72話 警察に通報しても構わない

翔との電話は一時間も続き、会話の中で関谷家の運命は既に決定的なものとなっていた。

翔が明朝帰ると言い終えた後、奈央は満足そうに電話を切った。

「関谷家か……」

彼女はつぶやき、さらに言葉を続けた。

「関谷家を片付けたら、悦子をどう処分しようか?」

少し考えてから、彼女は言った。

「まあ、警察に引き渡そう。彼女が残りの人生を刑務所で過ごすのも悪くないわ」

ちょうどその時、ドアベルが鳴り、奈央はパジャマ姿のままドアを開けに行った。ドアの向こうに立っているのが椿だと気づくと、彼女の顔色は一瞬で曇った。

次の瞬間、ドアを閉めようとしたが、男は彼女より早く動き、ドアを阻んで中に入ってきた。

「宇野さん、不法侵入も犯罪ですよ」

彼女は歯を食いしばって警告し、彼を追い出そうとした。

しかし、椿は全く気にする様子もなく、淡々と答えた。

「警察に通報しても構わない」

「……」

奈央は深く息を吸い込み、体内に溢れる怒りを抑えきれないように感じ、手がかゆくなってきた。彼を殴りたい衝動に駆られた。

「信じるかどうかは任せるが、誘拐の件は本当に僕に関係ない」

男は真摯な眼差しで奈央を見つめながら言った。

心の中の怒りを抑え、奈央はリビングに戻り、ソファに半分横たわりながら言った。

「信じるわ。だって宇野さんが私を誘拐する理由なんてないもの」

人は何かをするには理由が必要だ。悦子が彼女を誘拐したのは十分な理由があった。あの女はずっと自分と椿に何か関係があると考えていたからだ。

しかし、椿が彼女を誘拐するなんて、奈央にはあまり考えられなかった。

彼女が信じると言ったのを聞いて、椿は本当にほっとした。

「ありがとう」

「感謝しなくてもいいわ。どうせ私と宇野さんは敵になる運命なんだから」

彼女は笑いながら言い、冷たい光が目に浮かんだ。

彼女は椿が悦子を守るだろうと確信していた。それなら、二人が敵であるのも間違いではない。

椿はその意味を理解し、複雑な表情を浮かべた。

「どうしたら悦子を許してくれる?僕にできることなら、何でもするから」

「ふっ」

奈央は笑った。

「つまり、宇野さんは悦子のために、私に頼み込むつもりなの?」

これは珍しいことだ。椿が誰かに頼み込むなんて、簡単なことではない。

残念ながら、奈央はそんなに甘くない。

「悦子を
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