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第19話

松井詩は一瞬茫然とし、片瀬響人がさっき言った「あった」の意味が何を指しているのかを理解した。

彼の怒りをなだめようと、彼女は手を伸ばして片瀬響人の腕を引っ張った。「ここで騒がないで、今日はクラス委員長の赤ちゃんのお祝いの日なんだから......」

「松井詩!」片瀬響人は彼女の手を振り払い、「一つだけ聞く、誰の子だ?」

松井詩は彼に押し飛ばされ、バランスを崩してよろめいた。

クラス委員長は酔いが一気に冷め、急いで片瀬響人を引き止めた。「お前、どうかしてるのか?何してるんだ?詩ちゃんが妊娠してるなら、誰の子に決まってるだろ!そんな質問するのはおかしいんだ!」

松井詩はテーブルに倒れ込み、酒瓶が床に落ちて割れた。

森美希子はすぐにしゃがみ込み、松井詩を助け起こそうとした。

片瀬響人は怒り狂った獅子のように彼女を見下ろし、「誰の子だ?話せ!」と吼えた。

松井詩は苦笑して答えた。「誰の子だろうが関係あるの?浮気は浮気だ」

......

松井詩は本当は一度遠くに旅に出て、リフレッシュしてから帰ってきたいと思っていた。少なくとも、今のこの嫌な状況から一時的にでも逃れたかった。でないと、片瀬響人と麻生恭弥、この二人に押しつぶされそうだった。

しかし、ラッキーが今、彼女の世話を必要としているため、どこにも行けなかった。

家に帰ると、彼女の携帯には数え切れないほどの不在着信があった。

大半は麻生恭弥からだったが、彼女は応答する気にはなれなかった。

そのほか、いくつかはクラス委員長からだった。

彼女が途中で抜けたため、KTVでその後何があったのか、片瀬響人が彼らの関係の変化についてどう説明したのか、全く知らない。クラス委員長が電話をかけてきたのは、恐らく詳細を確認するためか、二人を仲直りさせようとするためだろう。どちらにせよ、彼女は応じたくなかった。

森美希子からは一度だけ電話があった。松井詩は少し考えた後、彼女にかけ直した。

「美希子?」

「詩ちゃん、家に着いた?」

「うん、もう着いた」

「それなら安心したわ」

「うん、大丈夫だから」

「じゃあ、切るね」

「うん、またね」

森美希子が突然、「詩ちゃん」と言った。

「ん?」

「本当に他の男と関係を持ったの?」

「......」

「詩ちゃん、もし決めたなら、振り返らないで」

「うん」
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