「私は課長となら、何があってもいいと思っています!」 「しかし……」 亜季は必死に恥ずかしそうにしながらも伝えるが、それでも櫻井課長は渋っているようだった。 上司としての責任があるのだろうか? 部下と関係を持つのは良くないとか。 だけど自分たちはお見合い相手だ。今は、そんなことは忘れてほしい。 「……自分から誘う女って嫌ですか?」 「いや……そんなことはないけど」 「私……課長の家に行きたい」 櫻井課長は曖昧に返事をしていたが頬は赤い。それでも亜季は折れずに思い切って、もう一度おねだりをしてみる。 自分でも驚くほどの大胆な発言だったかも知れない。 「……そう言うのは、俺だけにしろよ?」 櫻井課長は、ボソッとそう言うと亜季の手を優しく握ってきた。 こんなことは、櫻井課長以外に言う訳がない。 亜季は静かに頷く。そして手を引かれ夜の街を歩き出した。 その後ろ姿は、既に本物の恋人同士のようだった。 駅から少し離れた場所に櫻井課長の住んでいるマンションがあった。 私の住んでいる古くて安いアパートと違い、立派なマンションだ。 12階建てのファミリー向け。エレベーターまである。 エレベーターで5階に上がると櫻井課長の部屋まで案内される。 「ココが俺の部屋だ!」 「お邪魔します」 玄関のドアの鍵を開けて中に通してくれた。 亜季は緊張で心臓がバクバクと高鳴ってきた。 玄関で靴を脱いで、リビングの方に案内されるが、几帳面な彼の性格がよく出ていてホコリ一つない。 リビングの中に入ると、仕切ったように半分は整理整頓されている。 ダイニングテーブルはない。ソファーのそばにあるテーブルで、ご飯を食べているのだろう。 もう半分は健康グッズがギッシリと置いてあった。 あれは、電動で走るマシーンだろう。 「凄い健康グッズですね?」 「こんなのばかりで引いたか? すまない。買い集めていたら、こうなってしまったんだ」 櫻井課長は恥ずかしそうに言ってきた。 これだけ集めるのに、どれぐらいかかったのだろうか? 「いいえ、逆にどんなのがあるか興味があります」 亜季は健康グッズが置いてある場所に行き、触ってみる。 (うわぁ……これなんて重い) ズシッと重みが、のしかかって動かせなかった。女性の力では持てない。 何キロぐらいあるのだろうか? 「松井。危ないから、そういうのは、あまり触れるな。今、
Last Updated : 2025-03-12 Read more