「ううん。私が大事な書類の上に、こぼしたのがいけなかったから。櫻井課長は何も悪くないわ」「まぁ…そうだけど。でも亜季とはキスまでした仲なのに」 美奈子は納得いかない様子だった。本当にいい友人で同僚だと思う。 亜季のことを心配してくれる。「上司として正しい判断だと思うわ。私に特別扱いして怒らないとかフェアではないもの」 それは、さすがに上司としてはまずいと思う。 ひいきに繋がってしまうし、周りが納得しないだろう。 櫻井課長も特別扱いはできないと最初から言っていたし。「あんたは、大人ねぇ~私なら怒っちゃうわよ」 美奈子は呆れながら、そう言ってきた。櫻井課長は意味もなく怒る人ではない。 それは理解している。 だから余計に、落ち込んでしまったのだ。「まぁ、気にしないことね。もしかしたら、今頃は反省しているかも知れないし」「……うん。だと……いいけど」 亜季は、ため息を吐く。 美奈子と一緒に部署に戻ることにするが緊張感のまま。もう一度謝りたいが。 しかし電話中だったため、声はかけられない状態だった。 仕方がない。後にするかと思い、自分の席に戻ることに。 チラッとデスクを見ると、自分のスマホがチカチカと光っていた。 仕事中に私用の携帯を使うのはダメなのだが、気になって確かめてみる。 メッセージアプリに着信が2件。1件目は櫻井課長からだった。『さっきは立場とはいえ、言い過ぎた。すまない。今夜でも、お詫びをさせてくれ』 そう書いてあった。 気にしてくれていたようだ。 言い過ぎたって。チラッと櫻井課長の方を見ると、まだ電話中だった。 亜季は嬉しくて心臓が高鳴った。 まさかメッセージをくれるなんて。早速、返事を書いた。『こちらこそ。申し訳ありませんでした。お詫びは、こちらからさせて下さい』 これで、良し。 いつも誘って貰うばかりなので、たまには亜季から誘った。 そう思いながらも送信すると、もう1つのメッセージを覗く。母親からだった。『今日話があるから、あなたのアパートで待っているから。そのまま帰って来て』 そう書いてあった。また、お説教だろうか? お見合いの件が、どうなったかは母親に言っていないからだ。 きっと心配していることだろう。「どうしたの? 亜季」「母親からメッセージ。今日私のアパートに来るって。多分、説
Last Updated : 2025-03-04 Read more