紅葉が選んだスーツのデザインや色合いは、吹石夫人も大変気に入り、すべて購入することにした。輝和への2着のスーツも選び終えた後、紅葉は引き出しにあるネクタイも気に入り、数本を取り出した。「おばあちゃん、この2本のネクタイ、先ほどのスーツによく合いますよ」そう言って、彼女はブラックカードを店員に差し出し、「この2本は贈り物にするので、きれいにラッピングをお願いします」「私が払うわよ」吹石夫人が声をかけ、止めようとした。「お嬢さんにお金を使わせるなんて申し訳ないわ」「大丈夫です、ネクタイ2本なんて大した額じゃありませんから」紅葉は吹石夫人のカードを押し戻し、「おばあちゃん、こんなに長い間お話ししてくださったのに、まだちゃんとお礼もしていません」「ダメよ、これはこれ、あれはあれ」紅葉は少し考え込んだ後、「おばあちゃん、上の階にチャイナドレスのお店があります。よければ、私にチャイナドレスを一着プレゼントして、帳消しにしませんか?」「いいわね」吹石夫人はようやく笑みを浮かべた。上の階にあるチャイナドレス店は、全て手縫いで、デザインが美しいだけでなく、素材も最高級のものだった。吹石夫人は服を手に取り、離れがたそうにしていた。紅葉は吹石夫人の興味を感じ取り、彼女が気に入った一着を手に取って見せた。「おばあちゃん、このチャイナドレス、すごくお似合いですよ。お手伝いしますね」吹石夫人は中国と縁がある女性で、チャイナドレスを愛していたが、孫の前で演技した時に腕を傷つけたため、最近はチャイナドレスを着る機会が巡らなかった。最後、吹石夫人は気に入ったチャイナドレスを2着購入し、大満足の様子だった。紅葉が吹石夫人を連れてショッピングモールを出たとき、空はすでに薄暗くなり始めており、彼女の携帯にも新しいメッセージが届いていた。紅葉はそのメッセージを一瞥し、口元に微笑を浮かべ、吹石夫人に振り返って話しかけた。「おばあちゃん、私はもう行かないといけません。誰か迎えに来ますか?それともタクシーをお呼びしましょうか?」「大丈夫よ、行きなさい。少ししたら迎えが来るから」吹石夫人は手を振りながら答えた。その言葉を聞いた紅葉は、それ以上何も言わず、純平が駐車場から車を出すのを待ち、後部座席のドアを開けて
最終更新日 : 2024-11-12 続きを読む