輝和は目を上げて紅葉を見つめ、薄い唇をわずかに引き上げた。「どうやら君もただのバカじゃなかった。こんな面白い動画を撮れたんだ。もう手配済みだ。その映像は1週間ほどメディアに掲載されるだろう。磯輪がいくら金を使っても、撤去できない」「輝和さんが手を貸してくれたんですか?」紅葉は驚いたように言った。「昨晩の映像があんなに早く消えたのに、今日のはこんなに拡散が早いなんて…」彼女は森吉グループの広報部が力不足だと思っていたが、実は輝和が裏で動いていたとは。輝和はそれを大したこととは思わない様子で、淡々と「まあ、新婚祝いとして贈ってやるよ。あとは吹石奥さん、君の好きにすればいい」と答えた。輝和の「吹石奥さん」という言葉を聞いた瞬間、紅葉の心臓は激しく鼓動した。彼女はすぐに頷き、「ありがとうございます」と答えた。好機が訪れたなら、彼女はそれをしっかりと掴まなければならない。……翌朝、紘が輝和を会社へ送る一方、紅葉は菫の元を訪れ、自分が結婚したことを伝えた。菫は顔色を変え、すぐに言った。「お嬢様、あの吹石さんの嫁さんを次々と亡くしていると聞きましたよ。二度も妻を亡くされたなんて、どうしてそんな人と結婚したんですか?私にも貯金があります。お二人で生活するには十分ですから、ご自分を犠牲にしないでください」「彼との結婚はただの取引よ。彼と結婚したら、会社を取り戻してくれる。それだけだよ」紅葉は冷静に答えた。「復讐ができるなら、命を捧げても構わない」「奥様が生きていたら、絶対にそんなことを望まなかったでしょうに」菫は深くため息をついた。何しろ、森吉家にはもう紅葉しか残っていないのだ。紅葉は一瞬目を暗くしたが、すぐに微笑んで菫を安心させた。「大丈夫よ、菫さん。もしかしたら、私には幸運が訪れて、この呪いも解けるかもしれませんから」「まあ、そう願いましょう……」菫は紅葉の決意が固いことを悟り、それ以上何も言えなかった。つばめ園に戻ると、紅葉は菫と荷物を運び入れた。その時、リビングで短髪の若い男性がソファに座り、パソコンを弄りながら果物を食べているのを見かけた。その青年が最初に紅葉に気づき、急いで手に持っていたナシを捨てて立ち上がった。「奥様、こんにちは!僕は紘兄さんの弟、黒澤純平です」「紘さ
続きを読む