「堀井さん」紘が菫をベッドに座らせながら言った。「このおばさん、腰をひねったんです。診ていただけますか?」「おいおい、ここは神経外科だぞ。整形外科じゃないって、お前、吹石とそっくりだぞ…」晴人はため息をついて電話を切り、「このおばさんは誰の親戚?」「森吉家の使用人です」紘は隣に立っていた紅葉を指し、晴人に近寄って何やら耳打ちをした。次の瞬間、晴人は驚いたように顔を上げ、紅葉をじっと見つめた。紅葉は晴人にじっと見られて、少し居心地が悪くなった。腕をさすりながら、彼女は礼儀正しく言った。「堀井さん、菫さんを診ていただけますか?」「もちろん、美人の頼みなら断るわけにはいかないでしょ?」晴人は笑顔で答え、探るような視線を引っ込め、手袋をつけて菫の腰を診察し始めた。彼が軽く菫の腰に触れると、細かな「パキッ」という音がして、菫の腰は真っ直ぐに伸びた。菫は立ち上がって数歩歩き、「あれ、痛みがなくなったわ。お兄さん、腕がいいね」と驚いた声を上げた。「そりゃそうさ、少しは腕がないと医者なんかやってられないよ」晴人はパソコンで薬を処方しながら、菫と軽く話し始め、あっという間に打ち解けていた。菫も嬉しそうにしていた。紅葉は少し呆れた顔をしていた。晴人はまるで医者ではなく、クラブで女性客を喜ばせるホストのように見えた。診察室を出た後、晴人は笑顔で言った。「おばさん、このお兄さんと一緒に薬を取りに行ってください。僕は森吉さんとちょっと話があるんで」「いいわよ、若い人たちでゆっくり話しなさい。私は一人で帰るから」菫は笑顔を浮かべ、晴人をまるで娘婿を見るような目で見つめていた。さらに、彼女は紅葉に近寄り、小声で言った。「お嬢様、この男、なかなかいいわよ。考えてみて」「菫さん…」紅葉は苦笑いをした。時久に受けた傷が、彼女の心を冷たく閉ざしていた。輝和と結婚するのも、ただ復讐を手伝ってもらうためであり、それ以上のことを考える余裕はなかった。紘と菫が去った後、紅葉は晴人に向かって言った。「堀井さん、私に何かご用ですか?」「さすがだね」晴人は指を鳴らしながら、彼女を血液検査の部屋へ案内し、「紘から聞いたんだけど、輝和さんと結婚するんだって?ちょうど病院に来ているから、ついでに血
Last Updated : 2024-11-12 Read more