彼女はもうこの件を気にしていたので、何も起こらなかったのように、翔との生活を続けることはできなかった。しかし、もし離婚するとなれば、拓海は山口家に残るだろう。彼女は自分の子供から離れなければならない。「私も何が欲しいのか、わからない......」彼女はぼんやりと呟いた。「先月、彼の電話から女性の声が聞こえてきたけど、彼は何も説明しなかった。むしろ電話を受ける時にこそこそしてた。前はそんなことなかったのに。彼の女の秘書や女性友達のことも全部知ってる。だから気になって、後になって彼の体に別の女性の香水の匂いがしてきたの。髪の毛や、首元と手に女性の爪で引っ掻かれた跡まであった。それを彼に言ったら、彼はその女とは潔白だって言った。じゃあその女は誰なのかって聞いたら、何も言わないのよ。私をバカだと思ってるの?」美咲が翔にまだ感情が残っていることはわかった。でも心の中では、その一線をどうしても越えられなかった。この状況では、由佳も彼女の代わりに決めることはできなかった。ただ、何となく感慨深かった。由佳が山口家に来た頃、美咲と翔はすでに恋愛中だった。由佳が大学一年生の時、彼らは盛大な結婚式を挙げた。その光景を由佳はすべて目にしていた。その後、美咲は妊娠したが、子供が助からなかった。しばらく経ってようやく拓海が生まれた。かつて由佳は美咲を羨ましく思った。彼女たち夫婦の愛情と、家族の和やかな幸せを。今、その平和な家庭にひびが入っていた。清次、翔、本当に兄弟らしい。由佳は麻雀台にいた清次を一瞥した。すると、ちょうど清次もこちらを見ていて、目が合った。由佳はすぐに視線を外した。清次の目には一瞬微笑が浮かび、再び牌に視線を落とした。「外で拓海と沙織を見てくるわ」美咲は由佳の後ろを見つめ、立ち上がって外に向かった。「私も行く」由佳は水を一口飲んでから立ち上がった。突然、「あっ!」由佳は後頭部を押さえ、後ろにいた清次を見た。「いつ来たの?全然音がしなかったじゃない!」清次は顎に手を当て、少し困った表情で、「まさか君が急に立ち上がるなんて思わなかったからさ」由佳は目をくるりと回し、頭をさすりながら外へ向かった。清次は彼女の背中を見つめ、歩き出して後を追った。庭ではイベントがあり、沙織と拓海はもう庭にい
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