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第525話

清次はすぐにベッドから飛び起き、大股で歩き、ドアを開けて外を覗き込んだ。

泣きながら走ってきた沙織の姿が目に入った。目に涙をいっぱいに浮かべ、「おじさん」と彼に駆け寄った。

清次は彼女の背後を見て、清月がある客室の前に立って、険しい顔をしていた。

清次は冷たく彼女と視線を交わし、数歩前進して沙織を抱き上げ、部屋の中に連れ戻した。「沙織、どうした?」

初めてこんなに泣いていた沙織を見て、清次は胸が締め付けられる思いだった。

由佳もすぐに服を整え、急いで近づいてきた。「沙織、どうしたの?おばさんに話してみて?」

沙織は目を真っ赤に腫らし、すすり泣きながら由佳に両腕を伸ばした。

その姿に由佳は心が柔らかくなり、優しく抱きしめてベッドの端に座った。

沙織は由佳の胸に顔を埋め、彼女のパジャマの裾を小さな手でしっかり握りしめ、何も言わずに涙をこぼし続けた。

由佳はこの様子から、清月と何かがあったと察し、それ以上追及せず、背中をそっと撫で続けた。

やがて沙織は少し落ち着いたものの、まだ不機嫌そうな表情を浮かべていた。

由佳は清次にタオルを持ってくるよう頼み、沙織の顔を優しく拭きながら、「沙織、花火を見に行きたい?」と尋ねた。

沙織は首を横に振った。

「じゃあ、一緒に寝よ?叔父と叔母の間で」

沙織は小さくうなずいた。

ベッドに横たわっても、沙織は由佳にぴったり寄り添い、小さな手で彼女の服をしっかりと握り続けた。

清次は部屋の電気を消して、彼女たちの隣に横になった。

夜が明けた頃、由佳は沙織の様子を確認し、彼女の気分がかなり良くなっていることに気づいた。

由佳は肘で清次を軽く突き、「おばさんの部屋に行って、沙織の服を持ってきて」と頼んだ。

清次が部屋を出た後、由佳は沙織のパジャマを脱がせてあげたが、その時、彼女のふっくらとした小さな腕に青紫の痕があったのを見つけた。

由佳はすぐに聞いた。「沙織、これどうしたの?」

沙織は言った。「おばあちゃんが明日帰ろうって言ったの。でも、私は嫌だった。まだおばさん(由佳)と遊びたかったから。そしたら、おばあちゃんが怒ったの」

その青紫の痕は、清月が怒って彼女の腕を強く掴んだ結果だった。

一晩経った後ですら痕が残っているのだから、最初はもっとひどかったに違いない。

由佳の中に怒りが込み上げてきた。

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