彼女に好きな人がいることは以前から知っていたが、彼女の口から直接その話を聞くと、その人をどれほど好きだったかがよくわかった。わざわざ二回も強調していたのだ。その人は一体誰なのだろう?由佳は学部時代、成績は二位、卒業後は山口グループに入社し、この経歴だけでも十分に優秀だった。さらに山口家の後ろ盾もあるから、誰とでも釣り合うはずなのに、その人は由佳を選ばなかったのか?だが、その人が由佳を好きにならなくてよかった。そうでなければ、清次にチャンスはなかったかもしれない。清次は喉の奥が砂を飲み込んだかのようにざらついて、声がかすれた。「それで、彼に告白したのか?」「してないわ。実は彼と出会ったとき、すでに彼には彼女がいて、すごく仲が良かったの。だから、彼の前では何も言えなかった」清次は拳をぎゅっと握りしめた。心の中は苦くて、酸っぱくて、まるで全身に塩を擦り込まれたような感じだった。由佳が、その彼と彼女の仲睦まじい姿を見て心が引き裂かれそうになりながら、笑顔を作って、その痛みを隠していたかもしれない。夜になって、泣いていたこともあったかもしれない。そんな光景を想像するだけで、清次の心は引き裂かれるような痛みを感じた。狂おしいほどの嫉妬が胸を満たした。もし由佳が愛していたのが自分だったら、彼女にそんな思いは絶対にさせなかったはずだ。「それで、今でも彼のことが好きなのか? 彼と一緒になることを考えたことは? もし彼が今、君を追いかけてきたら、どうする?」清次は深く息を吸って尋ねた。「ないわね」由佳はきっぱりと言った。「恋愛中の人は、相手の欠点を見ないようにして、長所を過大評価するものよ。でも、そこから抜け出して冷静に見てみると、彼もただの人よ。男尊女卑な上に、小さくて自分勝手だ。道徳心もなく、人を尊重することができない人だった」清次はほっとし、少し眉を上げて言った。「そんなに欠点があったのか。よくそんな人を好きになったもんだな。でも、君が目を覚ましてよかった。でなきゃ、一生を無駄にしていたかもしれない」由佳は清次の真剣な顔を見て、つい笑い出した。清次はその笑顔を見て、一瞬戸惑いながらも、つられて笑顔を浮かべた。「何を笑ってるんだ?」「別に。ただ、あなたの言う通りだと思ってね」由佳は微笑んで言った。清次が、もしその「
続きを読む