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第547話

二人がすれ違う瞬間、晴人は清次の横顔を一瞥し、どこかで見たことがあるような気がした。この既視感は、賢太郎に似ているからではなかった。

だが、どこで見たのかは思い出せなかった。

たぶん、清次が海外出張に行ったときに一度顔を合わせたのかもしれない、と晴人は思いながら、離れていく二人の背中を見つめた。

ふと口を開き、「あの人、山口グループの新任会長、清次さんだよね?」と尋ねた。

「そうよ」

「彼ら、確か離婚してたよね?」

「ええ、離婚はしたけど、清次もあなたと同じように、人にしつこく付きまとうのが好きみたいね」高村は冷ややかに言った。

その後、晴人の反応など気にせず、高村は盗難犯を抑えつけていた二人の男性にお礼を言い、終わったら食事でもおごりたいと申し出た。

一人の男性が「いやいや、大したことじゃないよ。むしろ、その若者におごるべきだろうな。あいつがいなかったら、犯人は逃げてたかもしれない」と言った。

高村は晴人を一瞥し、ため息をつきつつ、「もちろん、彼にもおごるわ。二人とも一緒にどう?」と笑顔で誘った。

「いや、それは遠慮しとくよ」

二人は手を振って断った。

高村は仕方なく、近くの売店で彼らに水と土産物を買って渡した。

しばらくして、警察が到着し、防犯カメラの映像を確認し、全員の事情聴取を終えた後、犯人を連れて行った。

高村は警察が去っていったのを見送り、晴人に軽く挨拶をし、そのまま立ち去ろうとした。歩きながら由佳に電話をかけ、「終わったわ、今向かう」と言った。

「待って」

「まだ何か?」

「さっき、食事をおごるって言ってたじゃないか」

「いつ私がそんなこと言ったの?」高村は一瞬記憶を辿り、顔色を曇らせた。「あれは、二人の男性に言ったのよ。あなたには関係ない」

「でも、僕はその言葉を真に受けたんだ」晴人は不満げな彼女の視線を受けながら微笑し、「もう何を食べるか決めているんだ。高村家の令嬢がこんなことでケチになるはずはないよね。それに、彼らもまだ近くにいるよ」と言って、遠くを指差した。

高村がその方向を見ると、二人の男性がまだ近くで話していたのに気付いた。
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