夏希はかつての桜乃のことを思い出し、優子の気持ちも理解できた。女性として、夫が他の女性を囲うのは到底許せないことだろう。夏希は困った。行かなければ優子が余計なことを考えそうだが、行けば行ったで二人が揉めるのではと心配していた。「夏希、やっぱりこの庭には何かあるみたいね!」優子はなんと車椅子から立ち上がり、よろよろとした足取りで前方へ歩き出した。「若奥様、やはり戻りましょう」「何が隠されているのか、この目で確かめたいわ」夏希は事態を察し、急いで峻介を呼びに行かせた。峻介が大股で歩いて来たのを見ると、優子の目には冷たい光が宿った。「ドアを開けて、中を見せなさい」「優子ちゃん、戻ろう」「あなたは口では愛していると言っておきながら、実際に愛しているのは誰なのか見てみましょう」優子は引き下がらず、ボディーガードに「開けて」と命じた。峻介は強引に彼女を連れ戻そうとしたが、彼女の体調を考え、結局その要求に応じることにした。ドアが開かれると、庭の中で玲奈と美月が蝶を追いかけて遊んでいた姿が見えた。優子は美月を指差し、「これがあなたの愛なのね。表向きには私を愛していると言いながら、裏では他の女を囲っていたのね?」と皮肉を込めて言った。峻介は苦しい立場に立たされた。以前にも優子に親子鑑定書を見せたが、彼女は信じようとしなかった。今さら何をどう説明すれば信じてもらえるのか。「優子ちゃん、部屋に戻ろう。信じてくれさえすれば、君が知りたいことは何でも話すから」その時、里美が車椅子を動かして出てきた。「高橋さん、誤解しないでください。私は峻介とは婚約を解消しました。今のこの姿で、何かを争う気持ちはありません。ただ雨を避ける場所が欲しいだけなのです。どうか私たち母子に少しの猶予を与えて、ここに置いてください」彼女は慎重に話を続けた。「ただ、子供たちが時々父親に会えるようにしたいのです。あなたも母親なら理解していただけるはずです」一見すると無害な言葉であったが、優子の心には刺さった。優子が里美を渡り板として利用するために来たものの、彼女の言葉に心を刺された。峻介は冷たく里美を睨んで、「黙れ!」「どうして彼女に話させないの?峻介、あなたは本当にいい加減ね。両方を手に入れるつもりなんでしょう?」「優子ちゃん、違うん
最終更新日 : 2024-11-14 続きを読む