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第760話

進は言った。「佐藤総裁、少し変わられましたね」

「以前は、僕の決断が彼女にとって最善だと信じていたが、それが何度も彼女を傷つけることになってしまった。優子ちゃんの偽装死は、悪いことではない。こうすれば、僕を騙せたように彼女の敵も騙せる。彼女にとって一番安全な道になるんだ。暗殺の恐怖から解放されるのだから」

「つまり、佐藤総裁の芝居は奥様だけでなく、敵に対しても見せているものなのですね」

「そうだ、こうすることで調査の時間が稼げる。今こそ奴らの警戒が緩む時だ。ただ、その前に一つやるべきことがある」

「何でしょうか?」

「掃除だ」

佐藤家の奥様が病気で亡くなったという知らせは瞬く間に広がり、優子の葬儀が今夜に決まった。上流社会の顔ぶれが集まった。礼堂は大勢の人で埋め尽くされた。

桜乃は目を赤くしていた。彼女はこの嫁が好きだっただけに、若くして世を去ったことが残念でならなかった。

蒼太はまだ状況が飲み込めず、礼堂で鳴海執事に尋ねた。「誰が亡くなったんだ?」

鳴海は苦しい表情を浮かべ、「佐藤旦那様、どうかもう聞かないでください」

他の参列者たちもひそひそと話し合っていた。「聞いたところでは、佐藤総裁は奥様を大切にされていたようだ」

「本当に?以前は他の女性と結婚しようとしていたという話もあったじゃないか」

「そうだな、奥様は本当に運が悪かったな」

里美には葬儀に出席する資格がなかったが、優子の死を知ると興奮して涙を流した。

ついにこの日が訪れた。優子がいなくなれば、もう彼女と争う者はいない。神は見放さなかった。自分は優子を乗り越えたのだ。

峻介が現れた時、皆はその変わりように驚いた。

彼はまだ正装を身に着けていたが、いつも整っていた顎には髭が生え、やつれ、目が赤く、まるで十歳も老けたかのようだった。

彼は短い期間で体も随分と痩せた。彼を見ると、悠斗も峻介だとわからないところだった。

峻介が優子の死でこれほどショックを受けるとは思っていたが、これほどまでとは予想していなかった。

峻介は周りの視線を無視して、優子の遺影の前まで歩を進めた。

それは彼女が学生時代に撮られたもので、無邪気で陽光にあふれた笑顔が映し出されていた。

峻介は写真に手を伸ばし、この瞬間に時間が永遠に止まってくれたらどれほどよかったかと思った。そうすれば優子は、これほ
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