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第0376話

綿は森川真一にもう一度視線を送った。

なかなか、いい顔してるわ、

そのとき、スマホが突然鳴った。

画面には玲奈からのメッセージが表示されていた。「もう着いた?ちょっと飲みに行かない?」

「うん、行く!」

綿はスマホを閉じ、父親に声をかけた。「パパ」

「どうした?」天河は彼女に優しく返事をした。

「玲奈が誘ってるの。少し先で降ろしてもらってもいい?」綿は前方を指さした。

天河はすぐに頷く。「わかった、降ろしてやるよ」

車を降りる前、綿は真一に微笑みかけながら言った。「森川さん、父と良いお付き合いを。お会いできる機会があればまた」

真一も微笑を返し、「うん、また会いましょう」と頷いた。

ドアが閉まると、綿はすぐに玲奈との約束の場所に向かった。

綿が知らないうちに、真一は迷いを断ち切り、ついに桜井グループとの協力に応じる決断をしていた。

……

バー。

綿は黒いドレスに着替え、髪をラフにクリップでまとめ、美しい首筋が露わになっていた。

彼女はカウンターで一杯注文し、玲奈を探しながら人混みの中を歩いていった。

玲奈はバーの隅に座り、スマホをいじっていた。

綿はグラスを持ちながら彼女に近づき、冗談を言った。「おい、お姉さん。一人?一杯どう?」

綿の声を聞いて、玲奈はすぐに顔を上げた。

二人は目が合うと、すぐに微笑み合った。

玲奈はため息をついて、「もう、おっさんっぽいよ」とぼやいた。

綿は気にせず、グラスをくるくると回しながら、「俺のこと恋しかった?」とからかった。

「そうじゃなくて、今日は韓井司礼と組むことに決めた話をしようと思ったの」玲奈は真剣に話し始めた。

綿は頷き、「それは良い選択だね。韓井グループの新しいコスメライン、玲奈のスタイルにぴったりだし、絶対売れると思うよ!」

「でも、綿ちゃん、それが重要じゃないんだよ」

綿は少し驚いて眉を上げた。じゃあ、何が重要なの?

「最近、韓井司礼と何度か会って話をしてみてわかったんだけど、彼は本当にいい人だよ。綿ちゃん、彼を真剣に考えてみたらどう?」玲奈は心配そうに尋ねた。

親友として、玲奈は綿が素敵な相手を見つけて幸せになってほしかった。

必要なら手助けも惜しまないつもりだ。

しかし、綿は司礼に対して全く恋愛感情を抱いていなかった。

彼女にと
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