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第0383話

病院で。

綿がエレベーターを待っていると、突然、易と陸川夫人に出くわした。

二人は綿を見ると、表情がどこか重くなった。

綿は、過ぎたことはもう気にしないと心に決めていた。陸川家がこれ以上彼女に敵対しなければ、彼女も陸川家を恨み続けるつもりはなかった。

陸川夫人は、どこか後ろめたそうに顔をそむけ、

綿と目を合わせようとはしなかった。

綿はエレベーターに乗り込むと、二人に何も言わずそのまま行ってしまった。

綿が去ってから、易はやっと口を開いた。「母さん、一度痛い目を見たんだから、これからは桜井綿に手を出すのはやめようよ」

「はあ……」陸川夫人は深くため息をついた。彼女も少し後悔していた。本当に、軽率だったと思っている。

「易、あんたの妹には、もう母さんは心配させられっぱなしよ」陸川夫人は溜息混じりに言った。

易は複雑な表情を浮かべ、妹のことを考えると、自然と綿の顔が頭に浮かんできた。

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綿は須田先生と一緒に白衣に着替えて出てきた。

「須田先生、ありがとう。本当にあの日、あなたがいなければ、私一晩中吊るされてたかも」綿は感謝の気持ちを述べた。

須田先生は首を振り、「そんな、大したことじゃないよ」

「実は、あの時最初に電話をかけたのは高杉社長だったのよ」須田先生は綿に伝えた。

綿は少し驚いた。

なるほど、あの日輝明が自分を探しに来たのはそのためだったのか。須田先生が彼に電話をかけたのだ。

「彼、あなたのことを結構心配してたわよ」須田先生は綿を見つめて言った。

綿の顔は穏やかで、微笑みを浮かべた。「そうだったのね。まだ少しは良心があるってことか」

もし、彼が全く心配していなかったら、本当に冷酷な人間だ。そんな人は怖すぎる。

「桜井医生、高杉社長とは、本当にこれで終わりなの?ずっととてもお似合いだと思ってたのよ。あの陸川嬌なんか、あなたに比べたら全然ダメだわ」須田先生は優しく話した。

綿は微笑んでそれを聞き流し、それ以上輝明の話をすることは避けた。彼女はもう彼のことを持ち出したくなかったのだ。

二人が会議室に入ると、山田麗奈が荷物を片付けているのが目に入った。

「何してるの?」須田先生が尋ねた。

麗奈は憔悴した表情をしていた。

彼女は嬌の手先だったが、嬌がいなくなった今、彼女がここにいる理由もなくなった。

そして彼女は
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