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第0382話

二人のスマホが同時に鳴った。

最新ニュースの通知だった。

「岩段秋年氏の声明「そのクズは確かに僕です。皆さんにご迷惑をおかけして本当に申し訳ありません。実は、僕は以前から森川さんに恋心を抱いており、昨夜お酒を飲んで自制できず、彼女に無理やりキスをしてしまいました。森川さんは何も悪くありません。彼女に対し、ここで謝罪します。この件で傷つくのは彼女ですから、どうかこれ以上の詮索はやめていただき、彼女の名誉を守ってください」

玲奈と綿は顔を上げ、その声明を見つめた。二人の目には複雑な感情が宿っていた。

玲奈は本当に驚いていた。秋年がすべての責任を引き受けてくれたことに。

彼は彼女を一切責めることなく、逆に彼女を守ろうとして、世間に過度な関心を持たないよう訴えていたのだ。

玲奈は視線を落とし、まつ毛がかすかに震えた。

その時、綿のスマホに秋年からの電話がかかってきた。

綿はスピーカーをオンにし、秋年の声を聞いた。彼の声は軽やかだった。「これでこの件は解決だよ。君は何も言う必要はない。今後何か問題があれば、俺が全部対処するからさ」

「岩段社長、あなた…」玲奈が口を開こうとした。

「気にしないで。どうせ俺なんてクズだから、好きに言わせておけばいいさ。でも君は違う、大スターだからな」彼の声は軽薄ながらもどこか温かさを感じさせた。

玲奈は一瞬言葉を失った。

——でも君は違う、大スターだからな。

その言葉に、彼女の心臓が一瞬跳ねた。

彼女の失態から始まったこの騒ぎは、彼のおかげで終わりを迎えた。

玲奈は心から申し訳なく思い、「岩段社長、あなたに恩を返さなくちゃ」と呟いた。

「大したことじゃないさ。

「じゃあ、そろそろ切るよ。俺も自宅前の記者たちを片付けないといけないからさ」秋年はくすっと笑った。

電話が切れると、綿はにやりと笑い、秋年の口調を真似て「でも君は違う、大スターだからな〜」とおどけて言った。

玲奈は顔を赤らめ、ソファに飛び込むと、ソファに顔を埋め、心が大きく乱れていた。

「ねぇ、もしかしてこれが…恋じゃない?」綿は玲奈の隣にしゃがみ込み、両手で頬を支えてからかうように言った。

「岩段社長って、前からこんなに責任感あったっけ?全然そんな印象なかったんだけど」綿は眉をひそめ、何かを考え込むよ
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