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第0386話

綿は目を瞬かせた。

玲奈が頷き、綿の腕を掴んで一緒に行こうとした。

「いいよ」

場所は30階建てのプライベートレストランに決まった。

プライバシーは非常に守られており、地下駐車場からエレベーターで上がると、誰にも会わずに直接レストランの入り口に到着する。

エレベーターの扉が開くと、すぐにレストランの入り口だった。

案内係が彼女たちを個室まで案内し、左に曲がると一つの部屋を指し示した。

「ありがとう」ユナさんは軽く頷き、案内係に下がるように指示した。

ユナさんがドアをノックすると、中から男性の低い声が聞こえた。「入れ」

ドアが開くと、綿と玲奈は、中央に座っている秋年を見た。

秋年は黒いスーツを着ており、この会合に真剣に臨んでいることがうかがえた。

玲奈はマスクと帽子を外し、ユナさんに引っ張られて秋年の前に立たされた。

秋年はソファに座り、玲奈は彼の前に立っていたが、その表情は非常に複雑だった。

ユナさんはちらりと玲奈を見て、厳しい口調で「岩段社長に謝りなさい」と言った。

秋年は玲奈を鋭く睨み、眉を少し上げた。

正直、玲奈にとってこれほど難しいことはなかった。

玲奈は普段から気が強い性格で、特に秋年に対しては好きではない。そんな彼に謝罪することは彼女にとって大きな屈辱だった。

だが、この件は確かに玲奈の過ちであった。

「早く言いなさい!」ユナさんは玲奈の腕を軽く叩いた。

綿は秋年の正面に座り、リラックスしていた。

仕方ない、スターであっても、マネージャーの前では従わなければならない。

玲奈は唇を動かし、秋年の目を見つめた。その時、彼の首元にキスマークが目に入った。

玲奈「……」

秋年は玲奈が何かを言おうとしているのを見て、彼女が言葉を発するのに苦労しているのを感じていた。

玲奈は道中、秋年にどうやって謝るか、感謝の言葉を何度も練習してきた。

しかし、いざ秋年を目の前にすると、そのキスマークを見た瞬間、言葉が出てこなくなった。

なぜ秋年なの?なぜ?

ユナさんはため息をつき、再び玲奈の腕を軽く突いた。

玲奈は眉をしかめ、一気に言葉を吐き出した。「岩段社長、すみませんで——」

「もういい」秋年は突然、彼女の言葉を遮った。

彼女のようにプライドの高い人間が簡単に謝れるわけがない。無理をさせるのはよくない。

玲奈の言葉
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