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第0377話

綿は急いで玲奈を支え起こした。

すぐに周りに数人の男たちが集まってきた。

「おい、その子を置いてけ」短髪の男が言い放った。

綿は彼らを一瞥し、すぐに彼らが仕組んだことだと察した。

「彼女は私の友達よ。連れて帰るわ」綿はきっぱりと宣言した。

男たちは互いに顔を見合わせ、笑いを浮かべた。彼らが目をつけた獲物を、彼女がそう簡単に持ち帰れると思っているのか?

「大人しくしとけよ、俺たちを怒らせるな」一人の男が綿に近づき、彼女を睨みつけた。

「この子もなかなかいいな。いっそ二人まとめて連れて行こうぜ」スキンヘッドの男が綿を指差し、下卑た笑いを浮かべた。

綿の目が細まり、冷ややかな光が宿った。

「確かにいい女だな、二人とも連れて行こう」リーダー格の男が声を上げて笑った。

綿は右手を拳にして、「もう一度言うわ、どきなさい」と静かに命じた。

しかし、彼らは綿の言葉を無視し、玲奈を連れ去ろうとさらに手を伸ばしてきた。

玲奈は意識がぼんやりしており、腕を誰かに引っ張られる感覚だけがあった。

綿はすぐにその男の手を払い落とし、「彼女に触るな!」と強く言い放った。

綿は玲奈に帽子を被せ、顔を隠した。

夜のクラブで玲奈がトラブルに巻き込まれたという噂が広がるのは厄介なことだ。

綿は玲奈を守らなければならなかった。

普段は用心深い玲奈が、どうしてこんな罠にはまってしまったのか?

「触るなって?だったらお前にしようか?」男は綿を指差し、「お前、何様だよ!」

「俺の親父は田中グループの田中憲康だぞ!」男は威張って言った。

「何だそれ?聞いたこともない会社ね。そんな名前を言ってビビらせるつもり?じゃあ私の名前を聞いたら、あんた終わりよ」綿は軽く吐き捨てるように言った。

隣の男が煽り立てるように叫んだ。「おい、憲康さん!こいつ、あんたをバカにしてるぞ?許していいのかよ?」

「この女、生意気だな!俺を見下すとは!」田中憲康はテーブルにあった酒瓶を掴み、それを床に叩きつけて割った。

綿は内心でため息をついた。ただ酒を楽しもうと思っていたのに、こんなトラブルに巻き込まれるとは。

この連中、本当に殴りたくなる。

「偉そうにしやがって!」綿は隣にあったグラスを手に取り、中の酒を男の顔にぶちまけた。「何様だと思ってるんだ
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