共有

第0379話

綿が水を持って戻ってくると、玲奈は秋年の肩にもたれかかっていた。

秋年はカラカラな声で綿に言った。「桜井さん、俺が送るよ」

綿は眉をひそめた。暗がりの中でよく見ると、秋年の首には新しいキスマークが残っていた。

「大丈夫よ」綿は玲奈を秋年から引き離そうとしたが、玲奈はしがみついたままだった。

「玲奈!」綿が声をかけ、彼女の顔に冷たい水をあてた。

玲奈はかすかに目を開け、弱々しい声で答えた。「うん……」

「送るから、彼から離れて」綿は困り果てた。

「嫌……もう少しこのままで……」玲奈は低くつぶやき、さらに秋年に寄り添った。

綿は戸惑い、玲奈が何か変わってしまったように感じた。さっきまでは普通だったのに、どうしてこんなに秋年にべったりなのか?

綿は疑問に思い、秋年に問いかけるような目を向けた。

秋年は軽く咳をし、少し緊張した様子を見せた。

実は、彼は綿に言えなかった――自分が玲奈にキスをしたことを。

もし綿が知ったら、絶対に自分を叱るだろう。

「やっぱり俺が送るよ」秋年は言い直した。

玲奈がまだ秋年に寄り添っているのを見て、綿は仕方なく了承した。「分かったわ」

「高杉、今日はこれで帰る。彼女たちを送らないといけないから」秋年は輝明に向かって言った。

輝明は無言でうなずき、黙って彼らの後ろ姿を見送った。

別れ際に綿は輝明を一瞥したが、彼は既に別の方向を見ていた。

彼の腕の傷はまだ完全に治っていないようで、さっき綿を助けた際に再び負担をかけたらしい。

「玲奈、車に乗って。彼から離れて」綿は再度玲奈を秋年から引き離そうとしたが、玲奈はしがみついたまま離れなかった。

「まさか、私が運転するの?」綿は呆れた様子で言った。

秋年はため息をつきながら、「じゃあ、桜井さんに頼むよ」と言った。

綿は顔をしかめ、「まったく!」と文句を言いながらも、最終的に秋年が玲奈を抱え、後部座席に乗せることにした。

綿が運転し、玲奈を別荘まで送ることにした。

別荘に到着すると、綿は冷水を用意し、秋年に玲奈を浴槽に入れるよう指示した。

雅彦が解毒剤を持ってきたので、綿はそれを玲奈に飲ませた。

今夜、玲奈が秋年にあんなにくっついていたことを思い返し、綿は明日、
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status