第0207話

「輝明、どうしてここに？」美香は輝明が来たことに驚いていた。彼女と秀美はひっそりと行動していたのに、誰が彼に知らせたのだろうか？

「おばあちゃん、私が彼を呼びました」と綿がすぐに答えた。

オフィスの外では、たくさんの同僚たちが中の様子を伺っており、まさに「ドラマ」を目撃しようと意気込んでいた。

輝明がドアを閉めると、外の人々は一斉にため息をついた。「一体何を話しているんだろう？輝明がわざわざ来るなんて！」

「おばあちゃん、お母さん。僕が送っていくから、帰りましょう」と輝明は秀美を連れて行こうとしたが、彼女はすぐに彼の手を払いのけ、腕を組んで背を向けた。「私は帰らない！」

「ここは病院よ。綿は仕事中なんだから、おばあちゃんも少しは配慮して」輝明は声を低くして美香に注意を促した。

しかし、美香は孫を不満げに見つめ、「あなたがちゃんと自分の感情を整理していれば、私がここにいる必要なんてないのよ！」と不満を漏らした。

「そうよ、そうよ！」秀美も同調し、責めるように輝明を見つめた。

輝明はため息をつき、小声で「お母さん、おばあちゃんが無茶するのは仕方ないけど、君まで付き合わないでください」と言った。

「何が無茶よ！私たちは真剣に話しているのよ！」と秀美はきっぱりと言い返した。

綿は三人のやり取りを見て、少し頭が痛くなってきた。

「せっかく皆さんが集まったことですし、この機会にちゃんと話し合いましょう」と綿は輝明に提案した。

輝明は眉をひそめた。確かに家族としっかり話し合うべき時だと思った。

「向かいのカフェで話しましょうか？」と綿は提案した。ここは病院で、多くの人が見ているし、無用な噂を立てられるのは良くないと考えたのだ。

「いいわよ」と美香はすぐに同意した。彼女は綿の言うことを一番よく聞くのだ。

輝明は自分の祖母を一瞥し、心の中でため息をついた。家に連れて帰ろうとすれば拒否するのに、カフェで話すと言えばすぐに同意するとは。

「これはもう、彼の祖母というより綿の祖母みたいだな」と、輝明は心の中で苦笑した。

彼がオフィスのドアを開けると、ドアの外で盗み聞きしていた数人がびっくりして、慌てて後ろに下がり、軽く咳払いをしてそれぞれの仕事に戻った。

廊下を行き交う人々も、輝明たちに意識的に目を向けており、明らかに盗み見している様子が伺えた。

4人