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第0213話

玲奈の電話に対して、綿が黙り込むと、玲奈はすぐに結果を察した。

「どうせ、心が揺れてるんでしょ?」玲奈が問い詰めた。

綿は水を一杯注ぎ、ため息をつきながら答えた。「揺れてるのは私じゃなくて、私の身分証よ!」

玲奈は困惑し、「身分証?」

「そう、肝心な時に身分証が見つからなくなっちゃったの。だから、再発行するまで離婚はお預け」綿は水を飲みながら、窓際に立ち外を見やった。どこか疲れた表情を浮かべていた。

玲奈もため息をつき、「結婚する時もいろいろあったのに、離婚するのもこんなに大変だなんてね」

綿は苦笑した。本当にその通りだ。どうして離婚がこんなにも面倒なんだろう。

「そうじゃなければ、身分証がなくなったことなんて気づかなかったわ」綿は心の中で思った。

「綿ちゃん、数日後にあるパーティーに出席するんだけど、一緒に行かない?」と玲奈が誘った。

綿は目を細め、「どんなパーティー?」

「芸能界のパーティーよ。業界の有名な監督やスター、そして有名な投資家やエンターテインメント会社の社長たちが集まるの。なたの叔父さんとかね」玲奈は、少し気だるそうな声で答えた。

「もう少し考えさせて。最近、小栗先生と一緒に手術に入ることが多くて、時間が自由にならないの」綿はため息をついた。

「大丈夫、きっと時間ができるはずよ。その時は、私が芸能界の裏話をたっぷり聞かせてあげるから!じゃあ、私は仕事に戻るわね」そう言って、玲奈は電話をさっと切った。

彼女はいつもそうだ。話すのも早ければ、切るのも早い。綿は彼女のペースにすっかり慣れていた。

その時、看護師ステーションの近くで、男性の怒声が響いた。

「綿はどこだ!あいつを連れてこい!」

「うちのことに何であいつが口出ししてるんだ!」

「このクソ女が、俺の許可なしに勝手に妻の治療をしやがった。俺が許可したのか?あいつをここに連れてこい!」

綿はスマホを手に取り、振り返ると桑原看護師が慌てて駆け寄ってくるのが見えた。

彼女は綿の腕を引きながら、「綿、小栗先生が隠れてって言ってる!」と急いで言った。

「何が起こったの?」綿は状況が掴めないまま、桑原看護師に押されて歩き始めた。

「枝子の旦那さんが来たんだよ!彼があなたに文句を言いに来だ!」桑原看護師は焦った口調で説明した。

楚綿は足を止めた。

「私が逃げたら、他
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