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第0037話

車は急患の入り口で停まった。

綿は輝明をベッドに運び込んてあと離れたかったが、指が握られたまま離されなかった。。

眉をひそめ、彼の指をこじ開けようとしたが、相手の握りは固かった。

ため息をつき、仕方なく付き添うことにした。

「先生、大丈夫ですか?」綿は当直の医師に尋ねた。

「問題ありませんよ。点滴を受けて、胃を刺激しないように気をつければ大丈夫です」医師は簡単に説明した。

森下は薬を取りに行った。

綿はベッドの上の男を見つめ、嫌悪感が一瞬にじんだ。

手を伸ばして輝明の腕を軽く叩き、小さな声でぼやいた「高校の時から自分のことを世話できないし、二十代半ばになっても変わらないなんて。本当に手がかかるわね」

しかし、その青ざめた顔を見ると、綿はため息をつき、心配の色を浮かべた。

ベッドのそばに寄りかかり、腕を組んで輝明の顔をじっと見つめた。

こんな風にこの人に付き添う機会はもうないだろうと思った。

そう考えると、自然に笑みを浮かべた「高杉、私は本当に良い元妻ね」

夜中に元夫を病院に連れてくるなんて、これも良い行いの一つだろうか?

看護師が点滴を打ちに来たので、綿はベッドの端に立って見守った。

突然、綿のスマホが鳴った。森下からだった。

「奥様、会社で急な用事ができましたので、先に失礼します!」

綿は眉をひそめ「森下、ちょっと……」

ブツッ、ブツッ、ブツッ——

電話が切れた。彼女は口を開きかけたが、言葉を失った。

再びベッドの輝明を見つめ、心の中で小さく呟いた。

は?

なにこれ、どうなってるの?

看護師が点滴を終えると、綿は椅子を引き寄せて座った。

輝明の顔を見つめながら、苛立ちを隠せなかった。

ベッドに伏せた彼女の表情は落ち込んでいた。

その時、男の手が動いた、綿は目を上げた。輝明が目を覚ました。

二人の目が合い、気まずい空気が漂った。

「……」

もう大丈夫かな?

じゃあ、帰ってもいいかな?

綿は軽く咳払いをし、彼の胃を指さして言った「胃が痛んだの。先生は大したことないって、点滴を打てば良くなるって」

輝明は綿を睨み、喉が締めつけられるようで、言葉が出なかった。

綿は唇を引き締め、相手を見つめながら再び言った「次は酒を控えなさいよ」

輝明は黙っていた。

「大丈夫なら、私は帰るね」彼女はバッグを取り、立ち上
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