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第 0357 話

デイン——綿の携帯が鳴った。

ニュースでは、今朝、ホームレスが廃墟となったビルで誘拐された弥生を発見したと報じていた。

弥生の状態はあまり良くなく、現在は家に連れ戻されたとのことだ。

綿は目を細め、「ホームレス?」と小さく笑った。

どこのホームレスがそんな遠くて偏僻な廃墟に行くというのだろう?

綿は考えるまでもなく、これは輝明の仕業だと分かった。

綿はブラックリストを開き、輝明の番号を解除しようかと思ったが、考え直してやめた。

これから輝明と陸嬌が一緒になるなら、弥生は彼の義母だ。

彼が本当に義母に辛い思いをさせるわけがない。

昨日の夜中に弥生を助け出さなかっただけでも幸いだ。そうでなければ、次にあの場所に縛られているのは、輝明であると綿は確信していた。

綿が病室に戻ると、すぐに陸川易からの電話がかかってきた。

綿は出る前から易が何を言うのか分かっていたが、それでも電話に出て、スピーカーにしてベッドサイドテーブルに置き、本を読み始めた。

「綿!お前はさすがにやりすぎじゃないか?」易の怒鳴り声が響いた。

「母さんはもう年配なんだぞ、なのにお前は彼女を吊るし上げた。もし昨日の夜、母さんに何かあったら、お前は責任が取れるのか?」

綿は冷静に応じた。「彼女が年を取っているからって、彼女が正しいというの?彼女の命は命で、私の命は命じゃないの?」

「どういう意味だ!」易は怒りを露わにした。

「どうやらあなたの母親は、私が一昨日の夜に誘拐されたことをあなたに話していないようね。それも彼女が手配したことだと」綿は目を上げ、電話を斜めに睨んだ。

電話の向こうで沈黙が訪れた。

易は言葉を失った。

なんてことだ……

母さんが綿を誘拐するように手配し、さらには輝明まで巻き添えにしたなんて。

綿は冷たく笑い、その声には挑発が満ちていた。「陸川さん、私は陸川家の中であなたが比較的冷静な人物だと思っていたが、どうやらそうでもなさそうね。これでは陸川氏グループがあなたに託される未来がどうなるのか、想像もつかない」

易はこの言葉に憤りを感じた。

しかし、確かに今回の件については自分が軽率だった。

母が綿を先に誘拐したとは思ってもみなかった。

「ただし、綿。母に非があるとはいえ、同じ手段で報復するのはどうかと思う」易の声は少し和らいだ。

綿は冷たく笑
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