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第 0365 話

「おお、ルイスが値を上げてきてるのか?」雅彦も驚いた。「男が蝶のネックレスなんて買ってどうするんだ?」

綿は答えなかった。

ルイスのように一夜限りの関係を楽しむ男なら、高価なネックレスを女性に贈るのは普通のことだろう。

綿は確信していた。ルイスはM国で女性に非常に人気があるに違いない。

ルイスだと分かったので、綿は口元に笑みを浮かべ、値を呼んだ。「8億」

ルイスはさらに応じて「8億4千万」

綿は目を細め、「8億8千万」

ルイス:「10億」

場内では誰もこれ以上入札しなかった。皆、三号室と六号室の様子を見つめていた。

金髪の男と妖艶な女性が蝶のネックレスを巡って競り合っている。

面白い、面白い。

綿はルイスを睨み、冷たい声で「彼にくれてやれ」と言った。10億、あのバカに損をさせてやる。

雅彦は綿に無言で親指を立てた。「10億もあれば、オーダーメイドで作れるな」

綿はもう入札しなかった。

ルイスは口元に笑みを浮かべ、落ち着いてネックレスが自分の手に入るのを待っていた。

「10億、第一次入札」

「10億、第二次入札」

競売人はハンマーを手に取り、三回目の宣言をしようとした。

ルイスがワインを飲みながら、自分の勝利を確信していたその時だった。

場内に提示音が響いた。「12億の入札がありました。破頂です」

場内の全員が一瞬驚いた。

破頂とは、その品物の最高価格が12億に設定されていることを意味し、誰かが12億を出せばその者のものになるということだ。

ネックレスに12億を入札するとは、まさに破格の事態だった。

しかし、最も苛立ったのはルイスだった。

10億で手に入れようとしていたのに、一体誰が?

ルイスは外を見渡した。再び提示音が鳴り響いた。「この品物は九号室の所有となります」

九号室?

皆が九号室を探し始めた。

綿は頭を上げ、九号室を見た。

なんと、それは自分の向かいにある部屋ではないか?

トイレの入り口でタバコを吸っていたあの男ではないか?

「10億……蝶のネックレスか」雅彦は感慨深げに言った。「金があるっていいなあ」

綿は黙っていた。彼女は対面の男をじっと見つめ、面具の下、表情は深く沈んでいた。

「雅彦、あの男を覚えておけ。後であのネックレスを買いに行くぞ」綿は雅彦に言った。

雅彦はすぐにうなずいた。「分
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