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第 0356 話

森下は笑い、「別に、ちょっと聞いただけです」と言った。

そう言い終わると、森下は軽く頷いてその場を立ち去った。

綿は森下の背中を見つめながら、少し不思議に思った。

佐藤旭……

佐藤旭?その名前、なんだか聞き覚えがある。

ああ!

彼女は思い出した。

あの日、急診室でその名前を見たのだ。

その人物は刑務所にいる人で、重要な囚人だった。彼もまだ病院に入院しているようだった。

ただ、綿には森下がなぜその人を自分に知っているかどうか尋ねたのかが理解できなかった。

森下は佐藤旭の病室に向かった。

佐藤旭はベッドに横たわりながらテレビを見ていた。森下だと気づいたが、表情には何も変化がなかった。

「そんなにくつろいでいるのか?」森下は部屋に入り、窓辺に立って外を見た。

病院の風景もそれほど悪くない。

佐藤旭は何も言わず、ただテレビを見続けていた。

「体もだいぶ良くなったみたいだな?そろそろ刑務所に戻る準備ができたんじゃないか?」森下は両腕を胸の前で組み、冷たく言った。

佐藤旭は少し間を置き、森下に視線を向けた。「何をするつもりだ?」

森下は佐藤旭の前に立ち、険しい表情で言った。「質問に答えてくれ。正直に答えろよ」

「どうせ、昔誰が輝明を助けたのかを聞きたいんだろう。何度も聞かれて、いい加減飽きてきたんだが?」佐藤旭は苛立ちを見せた。

「分かっているのなら、正直に答えろ。当時、顧総を助けたのは一体誰だったんだ?」

森下は信じていなかった。輝明社長を救ったのが嬌だという話を。

ここ数年、嬌の行動から見ても、彼女は目的のためなら手段を選ばないタイプの人間だ。

そんな自分勝手な人間が、どうして輝明のために自分を犠牲にするというのか?

森下の圧力は非常に強く、輝明にも負けていない。

長年輝明の側で過ごしてきた彼が、そんなに簡単な男であるわけがない。

佐藤旭は森下の目をじっと見つめ、輝明の姿を思い浮かべた。

嘘をつきたくはなかった。

だが、嬌が背後で彼を脅していたのだ。どうにもならなかった。

最近、彼が何度も刑務所内でトラブルに巻き込まれた原因もわかっていた。

それは嬌だった。

嬌は彼が口を割らないか心配して、彼を消そうとしていたのだ!

さらに、彼の子供も嬌に連れ去られていた。

彼女を脅そうにも、方法がなかったのだ!

「お前たち
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