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第 0323 話

夜。

綿は一人で外に出て食事をしていた。深夜のレストランはとても静かで、二十階から見下ろすと、南城の夜景は賑やかだった。

綿は小さなステーキの一切れを切り、口に運んだ。昼間、輝明との出来事を思い出すと、心は驚くほど静かだった。

「いやぁ、秋年、私のことまだ知らないの?私は本当に一途なのよ。もし秋年が私のことを好きなら、私は……」

女性の甘ったるい声が綿の耳に届いた。綿が顔を上げると、秋年が女性を抱き寄せて、親密そうに席に着こうとしていた。

ふん。この大クズ男。輝明がクズだなんて、秋年だって大して変わらない。

類は友を呼ぶとはこのこと。同じベッドで寝る人間が、そう簡単に違うものになるわけがない。

「秋年、あの人は私より何が優れてるの?私のほうが岩段氏グループの広告塔にふさわしいんじゃない?」

綿は頬杖をつきながら、ぼんやりしつつ、彼女の愚痴を聞いていた。

どうやら広告塔の座をめぐって争っているようだ。

彼女の口にする「あの人」って、玲奈のことだろう?

ふん、玲奈と比べるなんて、彼女は玲奈の足元にも及ばない!

玲奈は世界でも唯一無二のトップスターで、誰にも取って代われない存在だ!

「失せろ」

突然、秋年の低く沈んだ声が耳に入ってきた。

綿は思わず目を輝かせた。

その女性は呆然とした。「えっ……」

「えっ、じゃない。俺はお前に失せろと言ってるんだ」秋年は突然怒り出した。

女性は困惑した。「いきなり何怒ってるのよ?」

「お前は玲奈とは比べ物にならない。玲奈と比べるなんて、身の程知らずだ」秋年は女性を頭から足までじっくりと見回し、皮肉を込めて言った。「俺が一緒に飯を食ったくらいで、調子に乗ってるんじゃないよ?」

「早く失せろ」

彼がそう言い終えると、彼女はようやく理解した。どうやら、彼女が玲奈を愚痴ったことが原因らしい。

そんなにひどいことを言ったわけでもない。ただ、玲奈がどこが自分より優れているのか尋ねただけなのに。

彼はそれだけで、こんなにも激怒するのか?

全く面子を立てることなく、失せろとまで言われるなんて!

ひどすぎる!金があれば何でも許されると思っているのか?

女性は唇を噛みしめ、秋年を見つめ、思わず泣き出してしまった。「わかったわよ、失せればいいんでしょ!」

秋年はため息をつき、イライラして頭を掻きむしると、近
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