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第0329話

夜の闇が深まる中、綿は荒れ果てた廃墟の中、椅子に縛り付けられていた。ゆっくりと目を開けたが、足元には果てしなく広がる瓦礫の山が見えた。座っている椅子は半ば宙に浮かんでおり、非常に不安定な状態だ。

声を出そうとしても、口はしっかりと塞がれていて、何も言えなかった。

綿は辺りを見渡したが、この廃ビルには骨組みしかなく、何も存在していない。

空には満月が浮かび、耳元を風が強く吹き抜けていく。彼女の心臓がひときわ高鳴った。

「ボス、あの女、目が覚めたみたいっす」誰かがそう言った。

「どれどれ、見せてみろ!」と声がし、何かが地面に投げ捨てられた。その後、足音が綿の背後から聞こえてきた。

目を開けたまま綿は横を見た。そこには、にやついた中年の男が立っていた。

「おお、本当に目が覚めたな」男は笑いながら、綿の顎を軽く指で突き、「美人だなあ。金持ちの女ってのはやっぱり違うもんだな」と感心したように舌打ちをした。

その隣にいた手下も同意しながら、「本当っすね、肌もツルツルで、見てるだけで気分が良くなりますね」と言った。

綿は眉をひそめ、男たちを睨んだ。こいつらは誰だ?

なぜまた自分がこんな目に遭うんだ?

誰を怒らせたっていうのだ?

「おいおい、そんな綺麗な目で俺を睨むなよ」男はわざとらしく困ったように言った。

綿「……」困ってるのは私なんだけど!

椅子に縛られたまま声も出せない、足は宙に浮いていて、下は果てしない瓦礫の山だ。怖くてたまらないのだ。

後ろのロープはちゃんと結ばれているのだろうか?本当にこのロープで支えられるのか?

男は綿の頭を押さえ、口に貼られていたテープを勢いよく剥がした。

「くっ……!」綿は痛みに息を呑んだ。痛すぎる!

彼女は男を睨みつけて叫んだ。

「あんた誰?誘拐するなんて、私が誰だか知ってるの?」

男は笑いながら、「おお、そんなに怒るなよ」とあきれたような顔で言い、肩をすくめた。

綿は一瞬言葉に詰まったが、気を取り直して、少し落ち着いて尋ねた。

「誰があんたを雇ったの?」

男は腕を組んで、「さあ、当ててみろよ」と挑発するように言った。

「この……」綿は心の中で男を蹴り飛ばしたくなった。

なんでこんなクイズを解かされなきゃならないんだ。

「桜井さん、誰かに恨まれてるんだよ」男はため息をつき、スマホを取り出して言っ
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