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第0330話

桜井家は普段から外で人に迷惑をかけるようなことはなく、行いも良い。誰がわざわざ彼女を誘拐するだろう?

「このゲーム、ルールが間違ってる!私は抗議するわ!」綿は大声で言った。

「黙れ」男は鼻で笑いながら、「お前に抗議する権利なんてないんだよ」と一言で片付けた。

綿「……」

下に積み上げられたレンガの山を見つめながら、誰がこんな卑劣なことをして彼女に手を出したのか考えていた。

輝明?

彼はそんなことをするような男ではない。

確かに気に入らない男ではあるが、こんな卑怯な真似はしないだろう。

それなら嬌?

だが、彼女はプロポーズを断られたばかりで、綿のことを考える余裕はないはずだ。

綿は混乱したまま、再びそばでひまわりの種を食べている男を見つめた。

男もちょうど彼女の方を見て、「ひまわりの種、食べるか?」と声をかけた。

綿「……お願い、私を解放して。雇い主がいくら払ったか知らないけど、私はその10倍払うから」

「俺たちみたいな世界を渡り歩く者が、金のために動くと思ってるのか?そんな安っぽい手で俺を買収するな。俺には仕事の倫理ってもんがあるんだよ」彼は軽く返事をした。

綿は口を尖らせ、「あんた、そんな仕事をしておいて、倫理を語るの?兄さん、お願いだから解放して、一緒にやっていこうよ!」

男は綿を見て、思わず笑い出した。

「お前と一緒にやる?一日に九回も腹を空かせることになるだろうな」

綿「……」この男、どこからそんな古いジョークを持ち出してくるんだ?

「兄さん、私は桜井綿よ。一日に九回も飢えるなんて、そんなことあるわけないじゃない。バカにしてるの?」

男は笑いながら、「ああ、バカにしてるさ。今のお前の状況を見てみろよ。こんな状況で俺と一緒にやっていくなんて、冗談にも程がある。

「すぐにさらわれるようなボスと一緒に何をやれって言うんだよ?お前を助けるために時間全部使うだろう!」

そう言うと、男は面倒くさそうに隣にいる部下に命じて、綿の口を再び塞がせた。

綿「……」言い負かされたから口を塞いだんだ。

絶対そうだ。決して彼女がうるさいからではない。

だが、次の瞬間、男は「うるさいんだよ」とボソリと言った。

綿「……」もう、理不尽すぎる。

彼らはお金を求めているわけではない。それなら、一体何のために彼女をさらったのだ?

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