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第0327話

「桜井先生!」

食事中の綿に、須田先生が声をかけ、向かいに座った。

綿は微笑んで、「須田先生、どうかしたの?」と問いかけた。

「今晩、仕事終わった後、何か予定ある?もしなければ、一緒に食事しない?」須田先生は優しく微笑みながら言った。

綿は、ふと違和感を覚えた。須田先生は普段から親切だが、今日はやけに親しげすぎた。

「須田先生、何か用事があるのよね?」彼女は疑念を抱いた。何か理由がなければ、こんなに急に食事に誘われることはなかった。

須田先生は気まずそうに笑い、「実はちょっと話しにくいことがあってね」とつぶやいた。

「いいよ、何でも言って」綿は軽く手を振り、促すように言った。

「それでも、やっぱり今夜、食事しながら話したいの」須田先生はそう言って、少しホッとした表情を見せた。

綿は一瞬考え込んだが、「分った。じゃあ、今夜向かいのレストランで会いましょう」と返事をした。

須田先生は嬉しそうに笑い、立ち上がって去っていった。

綿は彼女の後ろ姿を見ながら、何かを考え込んだが、それ以上は詮索しなかった。

……

その夜、綿は仕事を終えて、約束のレストランに向かった。

須田先生は少し早めに仕事を切り上げて、すでに席を確保していた。

彼女は手を振りながら綿を迎えた。今日は黒いワンピースを着ていて、普段の白衣姿とはまるで別人のようだった。

だが、綿が驚いたのは、須田先生の隣に5、6歳くらいの男の子が座っていたことだった。

これは…

「桜井先生、こちらは息子の旭よ」須田先生はにっこり笑って紹介した。「放課後、迎えに行ったから一緒に連れてきちゃって」

綿は頷き、旭に軽く目をやった。とても可愛らしいが、内気そうで、ほとんど話をしない様子だった。

料理はすでにテーブルに運ばれていた。綿がちらりとメニューを確認すると、どれも高価な料理ばかりで、須田先生の給料では負担が大きいだろうと思った。

「須田先生、話があるなら、直接言ってよ」綿は果汁を一口飲み、ストレートに言った。彼女は遠回しなやり取りが好きではないのだ。

須田先生はしばらく綿を見つめた後、意を決して口を開いた。

「桜井先生、科で副主任の選考が進んでるのは知ってるよね?」

「もちろん知ってるよ」綿はすぐに頷いた。「それに、みんなも言ってるじゃないの、須田先生が次の副主任だって」

須田先生
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