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第405話

刺すような冷気が漂っていたが、鈍感な里香もそれにようやく気づいた。

「あなた......誰?」

必死にもがくものの、その腕はまるで鉄のように固く、痛みがじわじわと伝わってきた。

「痛い!」

彼女は思わず叫び、さらに激しく抵抗した。

「誰だ!彼女を放せ!」星野がこの様子を見て、思い切って雅之に詰め寄った。

雅之の鋭い顔つきは冷えきっている。酔って目が虚ろな里香は、服が半分濡れ、無防備でかつ色っぽくも見えた。

こんな所で他の男と抱き合うなんて、いい度胸だ......!

雅之は苛立ちを抑えきれず、冷ややかな声で言った。「里香、よく見て、僕が誰だか分かるだろ?」そう言って彼女の顔を掴み、無理やり自分を見るようにした。

星野はその様子を見て不安げに雅之を睨みつけた。「彼女はあなたを知らないと言っています。もう手を離してください、さもないと、警察を呼びます!」

里香も「そうよ、知らないのよ、放して!」と必死に雅之を押しのけ、星野に向かって「彼を追い出して!」と助けを求めた。

その瞬間、雅之の顔が陰りを帯びた。

僕を知らないだと?他の男に助けを求めるなんて、いい度胸だな。

雅之は強引に彼女を抱き上げ、星野を睨みつけた。「邪魔するな!」

星野は圧倒されながらも、少し顔が青ざめた。この男は一目で高貴な身分だと分かる。しかし、身分がどうであれ、女の子を傷つけていいわけじゃない。

星野は彼を引き止め、「彼女はあなたを知らないと言っています、連れて行かせません!」と毅然と言い放った。

雅之は冷ややかに見下ろし、「お前、何者だ?」と睨みつけた。

「ただの一般人です。でも、彼女を乱暴に連れ去るなんて見過ごせません!」

里香ももがきながら、「知らないって言ってるでしょ、放してよ!」と叫んだ。

星野はその光景を見ると、心の中で浮かんだ怯えが急に消え去り、雅之の前に立ちはだかり、スマホを取り出して警察に通報した。

雅之はもがく里香をじっと見つめ、無力感が押し寄せてきた。酔っ払い相手に話しても、意味がないかもしれない......

「呼べばいいさ」雅之は冷たい目でそう言い放った。

星野はついに通報を完了し、「警察が来たら、彼女を放してください」と里香の怯えた表情を見て、そう警告した。

雅之は冷笑しながら、じっと星野を見つめた。その視線に、星野は背筋が凍る思
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