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第410話

慎司はひどく青ざめた顔で、「何揉めてんだ?今は解決策を考えるべきだろ」と一喝した。

みんな黙り込んだものの、彼に向ける視線にはどこか不満げな色が浮かんでいた。

その時、少し離れたところから一人の人影がゆっくりと近づいてきた。

「井上さん?」

夏実が微笑みながら歩いてきた。その顔には柔らかな微笑みが浮かんでいる。

慎司は彼女を見ると、ぱっと表情が明るくなり、「夏実さん、こんなところでどうしたんですか?」と尋ねた。

夏実は微笑んで、「ちょっと友達に会いに来ただけよ。それよりどうしたの?」と返した。

慎司はため息をつき、肩を落として事情を説明した。「小松さんにちょっと冗談を言っただけなのに、全然許してくれなくて、うちをDKグループに封殺させるつもりみたいなんだ。みんな家庭もあるのに、こんなことで職を失ったら生活どうすればいいんだよ?」

夏実は一通り話を聞き終わると、少し目を輝かせて「もし私を信じてくれるなら、DKグループの二宮社長にちょっと話をしてみましょうか?」と提案した。

慎司はその言葉に目を見開き、「夏実さん、二宮社長とお知り合いなんですか?」と驚きの声を上げた。

夏実は頷いて、「ええ、雅之とは友達だから」と言った。

「雅之」と名前を呼ぶ時の彼女の顔には、自然な親しみがにじんでいた。

慎司は感動したように彼女を見つめ、「夏実さん、この件を解決していただけるなら、どんなことでも仰ってください!火の中でも水の中でも飛び込みます!」と感謝の意を伝えた。

夏実は微笑み、「そんなに大げさにしないで。ただ、ちょっと手を貸すだけだから」と言って、スマホを取り出し、「じゃあ今から電話してみますね」と言って、少し離れたところへ歩いて行った。

「お願いします、お願いします!」

夏実は電話をかけ、「もしもし?」と出た相手の冷ややかな低い声が耳に届いた。

夏実は柔らかな声で、「雅之、荷物の片付けをしてたら、みなみ兄さんからのプレゼントを見つけたの。時間がある時に取りに来てくれない?」と持ちかけた。

雅之の声がさらに冷たくなり、「夏実、それ本当か?」と確認した。

夏実はうっすら微笑んで、「もちろんよ。あなたがみなみ兄さんのことを大事に思ってるの知ってるから、そんなことで嘘ついたりしないわ」と答えると、雅之が「今、いつ空いてる?」と尋ねる。

「今なら空いて
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