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第414話

里香はふと黙り、じっと雅之を見つめたあと、静かに言った。

「してないって言ったら、泣いたりする?」

「はは......」

雅之はクスッと笑い、その目の奥にあった曇りが少し晴れたように見えた。彼は少し笑った後、突然身を乗り出し、里香の首筋をつかんで、強引に唇を奪った。その息づかいは冷たさと熱さが入り混じっていて、彼女の呼吸さえも奪うようだった。

驚いた里香が一瞬だけ身を引いたが、彼もすぐに無理をせず、そっと彼女を離した。鼻先が触れ合うほど近く、互いに息を感じながら重い空気が漂っている。

「僕は絶対に離婚しない」

雅之は低く言い放った。

里香のまつげがかすかに震え、「......お父さんにすべての権利を取られちゃうかもしれないのに、怖くないの?」と小さくささやいた。

雅之は薄く笑い、どこか冷笑が混ざっていた。

「本気なら、とっくに口先だけじゃ済んでないさ」

彼の言葉に里香は納得しつつも、心の奥に冷たいものが広がるのを感じた。どうやら雅之は、DKグループだけでなく、二宮家のことさえも気にしていないらしい。そう考えると、離婚の話など遠い先のことになるかもしれない。

考え込む里香を見て、雅之は少し身を引き、彼女の顎に手をかけてじっと見つめた。

「何を考えてる?」

「......夏実が、何を考えてるのかなって」

雅之は「あいつなんて気にするな」と言って流した。

里香は唇をかすかに噛んで、「でも、最近やけに冷たくしてるよね。どうして態度を急に変えたの?」と問いかけた。

雅之が答えようとしたその時、スマホが突然鳴り響いた。彼が画面を見ると、由紀子からの着信だった。

「もしもし?」

雅之は冷たい口調で応じた。

「雅之、少し戻って来てくれないかしら?夏実ちゃんがあなたに会いたがっているの」

由紀子の柔らかな声が響いたが、それに対し雅之の声はさらに冷たくなった。

「彼女が会いたいと言えば僕が会うとでも?何様のつもりだ?」

由紀子が一瞬詰まり、彼の怒気に驚いた様子だった。ため息をついてから再び口を開き、「雅之、夏実ちゃんが言ってたんだけど、みなみからもらったものを渡したいって、今回は本気だって」と告げた。

雅之は一瞬黙り込んだ後、さらに冷えた声で言い返した。

「もしまた嘘だったら、ただじゃおかない」

電話を切った後、里香はすべてのやりとりを
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