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第419話

里香がトイレから戻り、エレベーターの前を通り過ぎようとした時、ちょうど中から出てきた月宮が彼女を見つけた。

電話中だった月宮は、ちらっと彼女を見て眉を少し上げ、すぐに言った。「今No.9公館にいるんだけど、誰に会ったと思う?」

電話の向こうは雅之だったが、冷たい声で返してきた。「お前の親父か?」

「ちっ!」月宮が舌打ちし、「バカ言ってんじゃねえよ!真面目な話だって!お前の大事なハニーに会ったんだよ!」と続けた。

雅之の声がさらに冷たくなり、「見間違いじゃないのか?」

月宮はニヤッとしながら、「俺の目がそんな節穴だと思うか?彼女が酔っ払って目の前を通り過ぎてったんだよ。いやぁ、夜遊びが盛んで羨ましい限りだな」と皮肉を言った。

雅之は黙って電話を切った。

「なんだよ、一体......」と月宮はスマホを見つめたが、里香が誰と一緒にいるのか気になり、彼女が消えた個室に向かって歩き出した。

部屋のドアに到着すると、中の音楽は控えめで、窓越しに見える人数も少なそうだった。月宮はそっとドアを押し開け、誰にも気づかれないよう中を覗き込んだ。

中には、里香が男の隣で乾杯しながら楽しそうに酒を飲んでいる姿が見えた。

「まったく、夜遊びが充実してるな......」

そうつぶやきながら、彼はスマホで写真を撮って雅之に送った。

帰ろうとしたその時、ふと顔を上げると、男の肩に手を回して顔を赤らめながら色っぽく見つめているかおるの姿が目に入った。なんだか急に不快な気分になった月宮は、そのまま部屋に入って行った。

「なんだよ、三人だけで盛り上がっちゃって、ちょっとは俺も混ぜてくれよ?」

両手をポケットに突っ込み、軽い調子でニヤリと笑いながら中に入っていった。

里香とかおるが同時に彼を見た。

かおるはすぐに言った。「盛り上がろうが関係ないでしょ。出てって」

月宮は眉を上げ、「そんなに冷たくすることないだろ?ちょっと賑やかしに来ただけだって」

かおるは、「ダメ。今は仕事じゃないし、あなたの顔は見たくない」ときっぱり。

でも月宮は引き下がる気配もなく、そのままソファに腰掛け、隣の男をじっと見て冷たい視線を向けてきた。「こちらの方は?」

かおるは間髪入れず、「あんたには関係ないでしょ?」

里香が目を細めて、「月宮さん、何か御用かしら?」

「いや、だから、賑やかし
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