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第422話

「んっ!」

里香の口に、またしてもぶどうが無理やり押し込まれた。

さっき星野が不意打ちで食べさせてきたときは驚きで反応ができなかったが、今度は屈辱感が込み上げてきた。雅之はわざと困らせてるに違いない!

里香はすぐさまぶどうを吐き出し、「お前、頭おかしいのか!」と、雅之の体から振りほどくように起き上がろうとした。こんな距離感は嫌だ。

しかし、雅之は許さなかった。里香が吐き出したぶどうを見て、その冷たい目にじわりと怒りが浮かんだ。「お前、いい度胸してんじゃねぇか」

他の男にもらったぶどうは食べて、僕がくれるやつは吐き出すって、ふざけんな。

その時、星野が突然立ち上がり、里香を雅之の腕から引き離そうとした。「おい、小松さんが嫌がってるのが見えないのか?無理やりはよくないだろ!」

雅之の目が細まり、鋭い視線が星野の手元に向かう。「どうやらその手、いらないようだな」

その瞬間、星野は冷や汗をかき、手が既に無くなったかのような錯覚に陥った。

個室の中に、殺気が広がった。

里香は星野を見て、目で「もういいから、外に出て」と合図を送った。

「でも、小松さん......」と不安そうな顔をする星野に、里香は静かに微笑んで「大丈夫だから、外に出て」と優しく言った。その柔らかい声は、自然と彼を気遣う口調になっていた。

その瞬間、雅之の手が里香の腰をぐっと締め上げ、まるで彼女を縛り付けるように圧力が増していく。

星野は不安そうに振り返りながら、何度も後ろを見つつ個室を後にした。

星野が出ていくや否や、雅之は里香をソファに押し倒し、その服を乱暴に引き裂こうとする。「里香、僕をバカにしてんのか?こんなところで堂々と見せつけようとして!」

彼の荒々しい態度に、里香は恐怖で体がすくみ、声も出せなくなってしまった。「雅之、やめて......」

雅之は彼女の顎を掴み、言葉を遮った。「やめてだ?僕がベッドで満足させられないから、他で刺激でも求めたか?」

「違う!」

里香は青ざめた顔で必死に彼を押し返す。「ただかおると遊びに来ただけで、たまたま会ったの。助けてもらったから、お礼が言いたかっただけ!」

里香が必死に説明しても、雅之の怒りのこもった表情は恐ろしく、冷たい目に殺意が浮かんでいるかのようだった。もし彼が本気で彼女を裏切り者だと思い込んでいるのなら、彼はこの場で何
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