里香は微笑んで、「いいわ、もし将来そう思う時が来たら、絶対にみんなに言うから、その時はみんなで出資して、私がシェフになるね」かおるが「問題なし!」とすぐに返事をした。三人はそのままダイニングルームに入った。祐介は色鮮やかで香り豊かな料理を見て、目を輝かせた。「帰国して初めての食事は記念しないとね」と言いながら、彼はスマホを取り出し、写真を撮り始めた。里香とかおるはテーブルの端に立っており、二人の手も一緒に写真に写り込んでいた。祐介は写真を撮り終えた後、すぐにSNSに投稿し、「本当に腹が減った、いただきます」と言った。「どうぞ」と里香が応えると、三人は再び席について食事を始めた。食卓の雰囲気は先ほどよりも賑やかになっていった。夜が深まる中、酒場にて、月宮は退屈そうにスマホを弄りながら、どうやってユキと話を切り出そうかと考えていた。そんな時、祐介の投稿に気づいた。月宮が投稿を開いてみると、映っていたのは色鮮やかで香りの良い6種類の料理とスープ。見ただけで料理の腕前が確かだとわかるほどだ。そして、テーブルの端には二人の手が写り込んでいる。彼は目を細め、映っている手をよく見て画像を拡大した。そして、じっと見つめながらボソッと、「かおるだな?」とつぶやいた。雅之は顔を上げ、彼に視線を向けると「そんなに久しぶりでもないのに、もう彼女が恋しくなったか?お前、もう恋愛脳か?」と冷たく言い放った。月宮は「違うよ、祐介が投稿した写真にかおるが映っててな、しかもその隣に誰かいる。顔を映してないけど......」とつぶやきながら、彼は雅之にスマホを手渡した。「憶測はやめておこう。ほら、お前の奥さんだ。彼女の手か確認してみろよ」雅之は眉間にシワを寄せながらスマホを受け取って、その写真をじっくり見た。彼は一目でそれが里香の手だとわかった。里香の体に魅了され、細かい部分までも知り尽くしている雅之にとって、その手を見間違えることはありえない。祐介が帰国したのか......しかも、帰国後の初めての食事が里香と一緒だったとは。くっ......雅之はスマホを強く握りしめ、不機嫌そうな表情を浮かべた。月宮はスマホを取り返して、「祐介が海外での仕事を片付けて、今回は簡単には帰らないかもな」と言った。彼が優れた成果を上げれば、父親から
三人はふと、里香が初めて祐介のいるバーに行って酔っ払った時のことを思い出した。あの時、里香は祐介にしがみついて離れなくてさ。「ビールだけだし、一本くらい平気だよ」って、里香は気にしてない様子で言った。「里香が平気って言うなら一本で十分じゃん?」と、かおるも賛同した。祐介は笑いながらビールを受け取って、そのままプルタブを引いた。飲もうとした瞬間、ドアのノック音が響いた。「こんな時間に誰が来るの?」と、不思議そうにかおるがつぶやいた。里香も不思議そうに目を向けた。祐介は気にせずビールを手に取って、一口ぐっと飲み込んだ。誰が来ようが、どうでもいいって感じだ。かおるがドアを開けると、そこには二人立っている。すぐにドアを閉めようとしたけど、月宮がすかさず手で押さえ、ニヤッと笑って「閉めてどうするんだ?やましいことでもしてたか?」とからかうように言った。「何言ってんの?アンタらなんか見たくもないわよ!ここは私の家なんだから、ドアを閉めるのも勝手でしょ?黙っててくれる?」と、かおるは冷たく言い放った。月宮は少しムッとした顔になった。この女、冷たすぎるだろ!昨夜は一緒に寝てたくせに、朝になったらまるで他人扱いで、今は火薬でも食べたかのように怒ってるんだ。月宮は歯を食いしばって、ぐっとドアを押し開けた。「俺が口出ししちゃ悪いか?」彼の大柄な体が前に出ると、かおるは思わず後ずさりし、堂々と二人が部屋に入ってくるのを、ただ見守るしかなかった。かおるは指をさして叫んだ。「出て行け!誰が入っていいって言った?住居侵入ってわかってんの?さっさと出て行け!」月宮が急にかおるに近づいてきて、かおるはびっくりして数歩下がった。「な、何よ、何するつもり?」月宮は鼻で笑って、「そんなにビビってるくせに、よくも俺に反抗できるな」かおるは苛立ちながら、「てめぇ......!」二人の様子は、今にも喧嘩を始めそうな勢いだ。里香があきれたように言った。「かおる、ご飯でも食べに来なよ」雅之が来ている以上、かおるが彼らを追い出すのは無理だって里香もわかっていた。それなら、まずはご飯でも食べよう。彼らが隣で見たければ勝手に見てればいいんだし。かおるは月宮を睨んでから、席に戻って「さあ、食べよう。ゴミどものせいで気分悪くならないように
里香は眉をしかめた。なんて失礼な言い方!まるで「お前なんて庶子だから、一生表舞台には立てないんだよ」って祐介を侮辱してるみたいだ。まさに敵意丸出しって感じ!それでも、祐介は穏やかな笑みを崩さず、静かに言った。「出自は選べなくても、人生は選べる。庶子だからって、ほしいものを追いかけられないわけじゃない。権力だろうが、人だろうが、俺は手に入れる」その言葉を言い終えると、祐介はふと里香をじっと見つめた。彼の目には深い笑みが浮かび、他の何か複雑な感情も滲んでいる。ほかのみんなは気づかないかもしれないけど、雅之だけははっきり見ていた。祐介が里香を見つめるその視線には、強烈な独占欲と野心が詰まっていたのだ。「すごいじゃん!」隣でかおるが拍手をしながら、親指を立てて祐介に笑いかけた。「喜多野さん、最高だね!地位なんて関係ないよ。偉そうにしてるやつだって、やってることが卑怯な奴なんてたくさんいるしさ。結局、何になるっての?」月宮は鋭くかおるを睨みつけ、ぐっと歯を食いしばる。ベッドを出た途端に冷たくなるなんて!この女を甘く見ていた!かおるも全くひるむことなく月宮を睨み返し、そしてすぐに祐介に微笑みかけた。月宮はさらに不機嫌そうな顔になっていく。かおるは里香を見て、「里香ちゃんも、喜多野さんは正しいこと言ってると思うでしょ?」そんなかおるを見て、里香が言葉をつづけた。「うん、祐介兄ちゃんが言ってることは正しいと思うよ。だって私は孤児で、親もいないんだから」その一言で雅之の顔はますます曇っていった。月宮は里香を傷つけてしまったことに気づいてないのか、彼女の方をちらっと見て、何も言わなくなった。そんな中、祐介がまた優しく言った。「じゃあ、これからは俺が君の家族になってあげる。里香、俺はいつでも君の味方だから」里香はその言葉に驚きながらも、祐介の確かな視線を見つめ返し、そっと微笑んだ。「それじゃあ、乾杯でもしよっか?」守ってくれる人がいるって、こんなにも心が温かくなるんだなって思った。里香がビールを取って飲もうとした瞬間、突然誰かの手が伸びてきて、そのビールを取り上げた。隣にいた雅之の方を見て、里香の目が一瞬揺れたが、何も言わずにもう一本ビールを取り出した。彼が飲みたいなら、譲ってあげればいいかって思ったのだ。新しいビー
「白々しい顔しやがって......一体、何がしたいわけ?」月宮は腰に手を当て、ベッドの端でかおるを見下ろしていた。ベッドに投げ出されたかおるの上着は肩からずり落ち、薄手のキャミソールワンピースがちらりと見えた。白く細い肩紐がかかる肩には、紅い梅のような痕が点々と残っていた。 それを見て、月宮は昨夜の自分の痕跡だと気づいた。瞳が一瞬暗くなり、喉がごくりと鳴る。身体の奥から不思議な熱が込み上げてくるのを感じた。不意に、喉の渇きと苛立ちが沸き上がってきた。一方で、かおるはベッドに膝をつき、上体を起こして睨み返した。小柄な体ながら、その気迫は負けていない。「もちろん、里香と雅之を離婚させるためよ!あんな男と結婚してから、里香がどんな目にあってるか、見てわかんないの?バカじゃないの?」月宮は冷笑を浮かべた。「夫婦の問題だろ?なんでお前みたいな外野が首突っ込むんだよ?『夫婦喧嘩は寝室まで』って言うだろ?今は揉めてたって、後々うまくいくことだってあるかもしれないじゃないか。そうなったら、お前のやってること、全部無駄じゃね?」月宮は彼女を指差し、呆れ顔で続けた。「いい加減にしろよ、考えなしで行動するの、そろそろやめろよな」「誰が考えなしだって言ったのよ?」かおるはカッとなり、手を振り上げて彼を叩こうとしたが、月宮は片腕で彼女の細い手首をしっかり掴んだ。その白くて華奢な手首は、少し力を入れただけで折れてしまいそうだった。「おい、俺に手を出すつもりか?」月宮は眉を上げて挑発的に見下ろした。「離して!」かおるはもがきながら、もう片方の肩の服がずり落ち、肘で引っかかったまま鎖骨が露わになる。そこにも昨夜の名残の痕跡が残っていた。月宮は彼女を軽くからかうつもりだったが、その痕跡を見た瞬間、言葉が詰まり、わずかに視線を外しながら咳払いをした。「言っとくけどな、あんまり無茶するなよ。雅之を本気で怒らせたら、俺だって止めきれないぞ」そう言いながら手を離し、少し距離を取った。かおるはふっと笑い、自分の体を見下ろして鼻で軽く笑った。「自分の野蛮さを自覚したから、今さら引いてるんじゃない?」月宮の顔は一気に険しくなった。かおるは服を直し、ベッドから降りつつ、言葉を緩めることなく続けた。「私が何をしようと私の勝手でしょ?あんた
かおるは身動きが取れず、内心でだんだん焦りが募ってきた。なに?この男、何考えてんの?まさか、もう一回しようってわけ?それだけは無理!あいつ、下手くそすぎて、もう二度とあんな苦しい思いなんかしたくない!かおるは全力で抵抗を始めた。彼女の体はしなやかで、月宮の下で絶えずもぞもぞ動いた。そのせいで、月宮の目つきはどんどん怪しくなっていく。「それ以上動いたら、ほんとに抱くぞ」月宮は渇いた声で低く言った。かおるは思わず動きを止めた。彼の意図が伝わってきたからだ。顔がカッと熱くなり、怒りと恥ずかしさがこみ上げてきて、「お、お前......早くどけよ!」と叫んだ。けれど、月宮はどくどころか、逆に彼女をぎゅっと抱き寄せて、「絶対に動くなよ。少し待てば落ち着くから」と囁いた。彼は顔を近づけ、熱い息がかおるの肌にかかる。かおるは鳥肌が立つのを感じた。もう、動けなくなった。というか、少し怖くなってきた。このまま無理やりされたら、自分じゃどうしようもない!このクズ男、どこででもそうやって発情するなんて!雅之は冷たい目で祐介を見つめ、口元に一瞬だけニヤリと笑みを浮かべた。「いいよ、その弁護士、紹介してくれよ。どれだけの腕か、見せてもらおうじゃないか」祐介は黙って里香に視線を向けた。里香は少し目を伏せ、長いまつげが微妙に揺れながら、答えた。「祐介兄ちゃん、ありがとう。でも今はまだ大丈夫」「なんだ?どうして遠慮するんだ?せっかくだから使ってみろよ。こっちだって弁護士知ってるし、どっちが上か、勝負だ。負けた方はこの世から消えてもらおうか?どうだ?」雅之は挑発的に続けた。里香は眉をひそめて、雅之を睨みつけた。「いい加減にして、雅之」雅之は冷たく睨み返し、「ふざけてるとでも思ってんのか?むしろ、僕は冷静だよ」と言い放った。里香は一瞬黙り、内心で思った。この男、頭おかしいんじゃない?祐介は笑みを浮かべていたが、その笑みも少し曇りかけていた。彼はわかっていた。里香が今、離婚できない状況にあり、彼を巻き込むつもりもないことを。それがなければ、彼女が断る理由なんてなかっただろう。「もし何かあれば、いつでも連絡してくれよ」祐介は優しく言った。「うん、わかった」里香は軽く頷いた。二人の間には静かな安心感が流れていた。そんな二人
里香はふと思い出した。月宮がかおるを寝室に連れて行ったことを。「どいてよ!」そう言って彼女はすぐに行こうとしたが、雅之に手で制されてしまった。里香の真剣な顔を見ながら、雅之は彼女の手をしっかり握り、低い声でささやいた。「今行っても、かえって気まずくなるんじゃないか?」里香は一瞬、迷ったように表情を曇らせた。「何事もお互いが同意してのことだからさ。無理なら、誰だってやめさせることはできるんだよ」と雅之は続けた。それでも里香は一瞬寝室の方に視線をやったが、やがて諦めたようにその場を離れた。彼女の脳裏にかおるの曖昧な態度がよぎり、もしかしたら......ただ遊んでいるだけかも、と思う。どうせ飽きれば、いずれは離れるだろうと。くるっと踵を返し、みんなで部屋を出た。階段の廊下は狭く、並んで降りるには一列になるしかなかった。雅之が一番前、里香がその後ろ、そして祐介が最後尾だ。歩きながら祐介が里香にささやいた。「海外で面白いものを見つけたんだ。今度時間があれば見せてあげるよ」里香は軽く振り返って「いいね」と微笑む。祐介も口元に笑みを浮かべて続けた。「景色もすごいんだよ。B島のオーロラは世界一美しくて、ずっと見ていたくなるくらいだ。一緒に行けたらいいのに」里香の目に少し憧れの色が混じった。「黒い砂浜もすごいって聞いたけど、本当に不思議な場所だよね」「うん、いつか行こう」「行きたいなあ......」そう言いかけたその時、突然、里香の鼻がズキっと痛み、目には思わず涙が滲んだ。気づかぬうちに前を歩く雅之にぶつかってしまったのだ。「なんで急に止まったのよ!」鼻を押さえながら、涙でぼやけた目で雅之を見上げる。雅之は振り返りもせずに言った。「階段で話しながら降りると危ないだろ?それに、君たちが話し終わるのを待ってからのほうがいいかと思っただけさ」言い方は穏やかだが、彼の冷たい雰囲気が漂っている。里香は何度か瞬きをしながら雅之の背中を見つめ、何も言わずにそのまま歩いた。祐介がくすくすと笑って、「二宮さん、おばあちゃんへのプレゼントはまだ買ってないんじゃなかったっけ?」と尋ねる。雅之はあっさりと答えた。「急がないさ、君たちの話が終わってからでもいいだろ」里香は少し間を置いて、「お店が閉まる前に早く行こうよ」
「そうか?」雅之は、里香の白くて純粋な顔をじっと見つめたかと思うと、ふいに身を屈めて彼女の後頭部を掴み、そのままキスをした。雅之のキスには、まるで狙いすましたかのようなテクニックがあって、じわじわと里香を引き寄せていく。彼女が我慢できなくなり、自ら絡みついてくるのを待っているように。「信じられないな」彼の呼吸が荒くなり、しゃがれた声で、唇の形をなぞるようにささやいた。外は夜も深まり、街灯の光は届かず、車内は薄暗いまま。二人の吐息が重なり合い、車内の温度もどんどん上がっていく。車は木陰に停めてあり、揺れる影が二人の顔に淡く映っていた。里香は抗おうとしたが、体がすでに雅之の手の感触に慣れてしまっているせいか、ほとんど抵抗の意思もなく体がふにゃりと力を抜いてしまった。雅之は低く笑って、「でも君の体は正直だな」と言った。里香の潤んだ瞳には、また涙が滲み、息を乱しながら言い返す。「私は普通の女よ。こんなふうに誘われたら、誰だって......他の男でも同じように......」でもその言葉を言い終える前に、また彼の唇が覆いかぶさった。そんな話、聞きたくもない! 他の男にこんな反応を見せるなんて、考えただけでも気が狂いそうだ!「んっ!」里香は思わず雅之を押し返そうとしたが、彼のキスはますます深く、激しさを増していく。彼は彼女の腰を掴むと、そのまま膝に引き寄せ、彼女を自分の膝に座らせた。大きな手でしっかりと彼女の腰を押さえ、二人の体はぴったりと密着した。お互いの体温を感じるほど、身を寄せ合ったまま。里香の顔は真っ赤で、呼吸も乱れっぱなしだ。雅之は彼女の手を取ると、ベルトのバックルにそっと触れさせた。「欲しいのか?」里香は腰が支えきれず、ふにゃりと彼の胸に身を預けてしまう。「雅之......感情はさておき、身体の相性だけなら、私たちいいかもね」雅之は彼女の顎を掴み、強引に自分を見るようにさせながら冷たく言った。「水を差す女に惚れてしまうなんて、僕もどうかしてる」里香のまつげが微かに震え、心の奥に築いた壁が崩れそうになる。雅之は再び彼女にキスをしたが、今回は意地悪く唇を軽く噛んだ。まるで罰でも与えるかのように。痛みに思わず涙を浮かべた里香を見て、雅之はふと手を離す。「誰が、お前と相性がいいって言った?」里香は
雅之は深い眼で、まだ赤みを帯びた彼女の顔をじっと見つめた。「わかった、自分で解決するよ」そう言って、彼はベルトのバックルを開けた。カチッという軽快な音が響き、里香の呼吸が一瞬止まり、車内の空気が急に足りなくなったような気がした。喉が少し渇いてきた。次の瞬間、手がぐいっと引かれた。「何してるの?」里香は驚いて、無意識に抵抗した。雅之の鳳眼は冷ややかに彼女を見つめた。「自力でなんとかしてるんだよ」「あなた......」里香は何か言おうとしたが、突然顔が真っ赤になり、指は軽く縮んだ。だが、それはますます熱を呼び起こすばかりだった。雅之の喉仏が力強く動き、依然として彼女をじっと見つめ、呼吸が次第に重くなっていく。里香は顔を背け、もうどうにもならないとばかりに放っておいた。どうせ、手を貸すつもりはなかったのだから。「ほんとに意地悪だな」雅之の低くかすれた声が耳元に響き、里香の神経をかき乱した。里香は唇を軽く噛んで、自分が声を立てないように必死に我慢した。どれほどの時間が経っただろうか。何もしていないにも関わらず、彼女の指はすでに疲れてきたが、車内の雰囲気はますます狭く、そして妖しげになっていった。これには一向に終わりが見えないようだ。「もういい加減にして!」里香は堪えられずそう言った。雅之は顔を近づけ、彼女の唇に軽くキスをした。「それだけの時間で、足りるのか?」里香:「......」鮮やかな唇を噛みすぎて、血がにじみそうだ!まるで何世紀も経ったかのように長い時間が流れ、ようやく雅之はウェットティッシュを取り出し、彼女の指を丁寧に拭き始めた。里香は少し息をつき、「どこでプレゼントを買うつもり?」雅之の声は、満足感を帯びたかすれた音色。「さあね」里香は彼を見据えた。「全部あなたのせいよ」雅之は彼女を見返し、まだその目には輝きが溢れていた。その抑えつけていた欲望の炎が再び燃え上がりそうになっている。里香は急いで目をそらし、彼を挑発しなかった。雅之の絶倫さは、里香もよく分かっている。雅之は彼女の手をきれいに拭いて、ようやく自分の整理を始めた。すべてが片付いた後、彼はタバコを一本取り出し、火を灯した。火の光はタバコの先で揺れ、淡い煙が漂い始めた。彼は目を半分閉じ、何とも言えない曖昧な表情