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第420話

かおるは媚びるような笑顔を浮かべたが、どこか嘘くさい。

月宮はそんな彼女に目もくれず、だらりとソファに腰を下ろし、彼女が酒杯を指先でつまんで揺らす様子を眺めながら、淡々と口を開いた。「もし俺に酒をかけたら、舐めてきれいにしろよ」

かおる:「......」

くそ、こいつ、私の心を読んでるんじゃないの!

彼女はすぐに酒杯をしっかり握り直し、「そんなことしませんよ。心からの乾杯ですから。そんなひどいこと、絶対にしません」と言った。

月宮は鼻で小さく笑い、それ以上は何も言わず、酒杯を持ち上げて彼女と軽く乾杯した。

かおるは彼が酒を一気に飲み干すのを見て、自分も飲もうと手を上げた。けれど、さっき飲みすぎたせいか、手を上げた瞬間ふらっとして、酒杯をうまく持てずに酒が月宮のズボンにこぼれてしまった。

「わ、わざとじゃないんです!」かおるは驚きで目を見開いた。

月宮の顔はすでに暗くなっていて、酒杯をテーブルにバンと置きながら、「お前、本当に見直したよ!」と毒づいた。

自分を罵っても怠ることなく行動に移す。やるじゃないか!

かおるはすぐに紙ナプキンを引き抜き、「ごめんなさい、わざとじゃないんです。ちゃんときれいにしますから」と言いながら拭き始めた。

月宮は立ち上がり、低い声で「こっちに来い」と言って暗い顔のままバスルームへ向かった。

かおるは慌てて追いかけ、その時、さっきのめまいが頭をよぎって後悔した。なんであんなことになっちゃったんだろう?

里香はぱちぱちとまばたきし、二人が連れ立って部屋を出ていく様子を見て、不思議そうに言った。「どうして行っちゃったの?」

星野は彼女を見て尋ねた。「里香さん、大丈夫ですか?」

里香は少しうなずいて、「大丈夫よ」と答えた。

星野は「上の階に休める部屋があるので、ご案内しましょうか?」と申し出たが、里香は首を振って「いいえ、かおるが戻ってくるまで待つわ」と答えた。

星野は無理強いせず、穏やかに彼女のそばに座り、まるで子供のように大人しくしていた。

ふと里香の視線が彼の顔に落ちた。彼の眉目はどこか雅之に似ている気がする。

いや、優しいまさくんみたい。

雅之は冷たいから、苦手だけど。

里香はぽつりと尋ねた。「大学はもう卒業したの?」

星野は一瞬驚いてからうなずき、「はい、卒業したばかりです」と返事した。

「卒
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