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第416話

雅之は冷たい目で夏実を見つめた。「いいよ、兄を呼んでくればいいさ」

夏実は泣き声を止め、愕然とした表情を浮かべた。

今の雅之には、何を言っても響かない。まるで、全てがどうでもいいと言わんばかりだ。

夏実の胸の中には、強い不満が渦巻いていた。自分が足を犠牲にしてまで頑張ったのに、こんな仕打ちなんて......一体どうやって納得しろっていうの?

その時、病室のドアがノックされた。

「お嬢様」

現れたのは夏実の家の執事で、彼は手に小さな箱を持っていた。

夏実が言った。「これ、みなみ兄さんがくれた誕生日プレゼントなの。ずっと大切にしてて、まだ開けてなかったの」

執事は箱を雅之に差し出した。

雅之は無表情でそれを受け取り、箱を開けて中を一瞥した。それはオルゴールで、細かい細工が施されていて、まさに女の子が好きそうな美しいデザインだった。

彼は無言で立ち上がり、そのまま部屋を出ていった。

夏実は彼の去っていく背中をじっと見つめ、顔が険しくなった。そしてスマホを取り出し、電話をかけた。

「どうしよう?雅之、私のこと全然見てくれないし、完全に無視されてる。このままで本当に彼と結婚できるの?」

電話の相手が言った。「だったら既成事実を作ればいいんじゃないか?そもそも、君の目的は結婚じゃないだろう?」

夏実は悔しさで歯を食いしばった。「でも、そんなチャンスがなかなか見つからないのよ」

相手は笑って言った。「慌てなくていいさ。じっくりやれば、そのうちチャンスは来る」

聡は里香に休暇を与えた。

そのまま家に戻った里香に、執事が心配そうに声をかけた。「奥様、大丈夫ですか?首にガーゼが......」

里香は微笑んで答えた。「大丈夫よ、ちょっとした怪我だから」

執事は念を押すように、「どうか、お気をつけくださいね。傷が感染しないように」

「うん、気をつけるわ」

里香は二階へ上がり、寝室に入ったところでスマホが鳴った。見知らぬ番号だ。

少し迷ったが、通話ボタンを押した。

「もしもし、どなたですか?」

「やあ、君の死ぬ日が近づいているよ。ワクワクするね」

聞き覚えのある声に、里香の手が思わず震えた。斉藤だ!

里香は怒りを抑え、冷静を装って問いかけた。「どうして私を殺そうとするの?私はあなたに一体何をしたっていうの?」

斉藤は不気味に笑い、「忘れ
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