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第26話

記者たちはその一言を聞いた瞬間、一斉にマイクを前に突き出した。

氷川は、何も言わずに美咲を自分の後ろに引き寄せた。

記者たちはその時初めて氷川に注目した。この男は黒崎拓也が話していた「ヒモ男」なのか?黒崎拓也は何を考えていたの!目の前に立っていた男は、、圧倒的な威圧感を持っていた。必ず普通な人ではなかった。

こんな優秀な人がきっとヒモではなかった。

黒崎拓也は、バカな男だった。記者たちは彼にもっと近づこうとしていた。

しかし、氷川は冷ややかな目で彼らを見つめた。

記者たちはその一瞥に驚いて、先ほどの行動を後悔した。

そのあと、氷川は妻に目を向け、優しい眼差しは彼女に注がれた。

美咲は記者の些細な動きには気付かなかった。彼女は心の中の苛立ちを抑え、過去の出来事を話し始めた。

「私と黒崎拓也は五年間付き合った。最初の一年間は彼が積極的にアプローチしてきたが、その後は徐々に私に対する関心が薄れ、ほとんど気にかけてくれなくなった。

「それでも、私は諦めなかった。しかし、昨日、結婚式の前日に、黒崎拓也に結婚式の衣装を届けに行った。

「彼と私の妹、橋本月影と浮気をしたことを目撃した」

「いい加減にしてくれ!」

それを聞いた黒崎拓也はもう我慢できずに、美咲に向かって怒鳴った。

橋本月影も泣き出し、涙が次々とこぼれ落ちた。

でも、事実を述べた美咲は、胸の中に刺さっていた棘を抜いたような気がした。

美咲はカメラに向かって軽く肩をすくめ、こう言った。「言ったことは全部真実だ。信じるかどうかは皆さん次第だ」

「それに、私には彼らを中傷する理由なんてないでしょう?」と彼女はにっこり微笑んだ。

氷川は楽しげに美咲を見つめた結婚したばかりの彼女がこんな一面を持っていたとは、思いもよらなかった。

黒崎拓也は何が何でも美咲の発言に反論した決心をした。そうしなければ、黒崎グループの株価が暴落してしまうだろう。

「あなたには何の証拠もありません。一昨日の結婚式に、あなたがこの男を連れて来たのは、そこにいた全員が目撃しました」

それを聞いた氷川は観客になったのをやめた。

「その男は僕だ。

「君、頭の調子が良くないみたいだけど、大丈夫?」

冷静さを失った黒崎拓也は、隣に立っていた氷川颯真に目を光らせて集まった。「皆さん、見てください。このだらしない女が愛人ま
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